「いや、やっぱり私書く人間ですから、アイデアが思いつかない時もありますよ」そんな時に猫の手を借りたらどうなるのかというのが気になったので、試してみて様子を見ることにしてみた

岡田公明/ゆめみけい

いや、分かっていた分かってたけども...

 この度、100%失敗すると分かっていて、ただネタ的な意味で、ある意味現実逃避と同じような、無謀に挑戦してみようと思った。


 きっと比較的猫の中でも知的指数が高いと思われる内の猫

 ミャーさんは、俺のゲーミング用の椅子に鎮座して、キーボードに手を置いた。


 既にこの時点で、画面に映るメモ帳には謎の羅列が綴られているのを見て、もう察している。


「頑張ってくれ、ミャー」


「ミャー」


 俺は既にチャオチュールをミャーに与えていて、ミャーは満足げにその椅子に人間のように、ただ人間ほど背筋がしっかりしていないので、もたれかかるようにして座っている。


 たまたま、机の高さを変えれるものでよかったと、思う日が来るとは思っていなった。


 この部屋の机と椅子は両方高さを変えることができ、なんかできる猫みたいな感じがする。


 まぁ今も、その指というか爪で、キーボードを多少傷つけていたり、長押しのせいで文字の羅列は伸びているけど


 今になって思う、やっぱりマウスは除けておいて良かった、危なかった。

 絶対に変な弄り方されて、葬られる。


 危なかった、ナイスという自分への称賛を送り、再びミャーを見た。


 当然ながらしっかりと把握しているわけではないので、手は早くない。

 というか、ずっと置いているが動いてはいない。


 この家に来た時より幾分も大きくなった体、肥えたお腹は単衣に普段の生活によるものとは言えない、こうやってまるで現実逃避みたいに与える報酬によってできている、私腹による塊だった。


 そして、その満足故、丸くなった体のように性格も丸くなっていて、凶暴性は無い、だからこんなバカげたことに付き合っているのだろう。


 ―カタカタカタカタ


 ゆっくりながらも、キーボードに文字を打つ


「まさか、ミャー凄いぞ」


 どうやら、手をそのまま置くのをやめ、爪でキーボードを傷つけながら、タッチタイピング(物理)を行っている。


 その画面を眺めながら打つ様子は、熟練のプロさながらであるが、問題はそこに浮かぶ謎の言語


[dじゃふぃあじょf@あwlfぱm]


「よ、よし良い感じだぞ!」


 完全に現実逃避というよりは、なるべく長く現実から目を背けたいという意志があるため、ミャーのことをほめる。


 人間と暮らしているとある程度賢い動物は分かる、これはきっとほめていると


「ミャー」


 そう、呼応するミャーがサンズアップしているように見える。

 それに対して、サンズアップを返すこの姿は他の第三者が見た時に、非常に不思議に思うだろうとは自覚している。


 それほど奇妙な空間であった。


 そして、一つ間違えれば、この人間の頭を不安に思い、精神科に連れていかれても別におかしくは無いものだった。


「ミャー」


 鳴き声は同じなのだが、少し不機嫌そうだ。


「どうした、ミャー」


 すると、ミャーは爪で画面を指す


「ほほう、これが気に入らないのか?」


「ミャー」


 今度は満足そうにそう言った。


「よし、分かった、消してやろう」


 そうして、バックスペースを押してその部分を削除する


「ミャー」


 感謝を告げるかの如く、そう言って再びタイピングに戻る。

 正直、何基準で消したかは分からないが、さっきの文面に恐らく誤字があったのだろう。


 このアルファベットと漢字、仮名文字、カタカナ交じりの文章はただの不協和音でできているのではなく、その実、人間には理解できない深みが隠されているということが、ここで判明する。


「まぁ、違うだろうけどな」


 そうして、ミャーは気に入ったのか、PCに張り付いて、タイピングを続ける。


「よし、ミャーそろそろ休憩だ、流石に体にも良くないし、ミルク持ってきてやるから」


 こちらにも、仕事の都合があり、そろそろPCを使わないといけない。

 こうやって現実逃避をしている間にも、スマホには通知が増えている。


「はぁ...」


 甘くない現実に思わずため息が出る。

 しかし、締め切りを破れば収入は無い...


 そんな非常な現実と向き合う時が来たらしい


 ―しかし、問題はそこからだった


「お...集中してるんだな

 じゃあ、持ってくるから大人しく待ってろよ~」


 のめり込みながら、PCから離れないミャーを見て、俺はその部屋から離れた。


 キッチンに行って、ミルクを冷蔵庫から出し、器に入れ、少し常温にするために放置する。

 冷たすぎると飲めないからだ。


 そして、俺のお茶も同じように用意して、部屋に戻った。


 部屋に近づくとともに、謎に鼓動が早くなる感覚があった、肝が冷えるとは違うが、悪寒がした、なんかヤバい気がした。


 そして、速足で向かう。


「ミャー?」


 首を傾げつつ、俺を出迎えたのは、ボックスPCを倒したミャーだった。


「な、何したんだ?」


 まさか、目を離した隙に突然惨事が訪れると思ってもいなかったので、戸惑いが大きい。


「ミャー」


 しかし、ミャーはミャーとしか言わない。

 モニターには何も映っていない。


「あ...あぁ」


 俺は察した、横着は良くないと。


 結論、猫の手て横着をしない方が良い。

 緊急の時ならなおさら...


 想像以上の被害に、俺の心が荒れ、編集の雷が落ちたのは言うまでもない。

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