猫の手を借りようとしたら怒られた
あーく
猫の手を借りようとしたら怒られた
「どうしよう!課題全然終わってないよ〜!国語もこんなに残ってる〜!えーと、なになに?『四角に入る動物を入れなさい。何とかの手も借りたい』?えーと、何だっけ、えーと、えーと……トムソンガゼル!?」
「『猫の手も借りたい』だにゃ。何でそんなマニアックな動物が答えだと思ったにゃ」
「そうそう!『猫の手も借りたい』ね!……って、えー!クロが喋ってるー!」
「全く、いつまでたっても起きて来ないからおみゃーの部屋に来たにゃ」
「この際クロが喋ってることはどうでもいいよ〜。おねが〜い。課題手伝ってよ〜。ほら、今日のおやつ倍にしてあげるからさぁ〜」
「まさに『猫の手も借りたい』……か。だが断るにゃ」
「え〜!なんで〜!」
「おみゃーたち人間は常日頃から我々猫を敬っているはずだにゃ」
「う……うーん。確かに間違ってはないかな……」
「そんな我々の手をやすやすと借りられると思ったら大間違いだにゃ!」
「なんか怒られてるー!」
「おみゃーたちがおかしいんだにゃ。人間は猫を敬ってるはずなのに、扱いが酷いんだにゃ」
「そ、そうなの?」
「『窮鼠猫を噛む』とか『猫を追うより魚をのけよ』とか『猫ふんじゃった』とか、ロクな扱いを受けてないにゃ!」
「さ……最後のは違うでしょ……!」
「しかも、あまりにも猫の手も借りたいって言うから、我々も仕方なく気を使ってるんだにゃ。おみゃーたちは気付いてないかもしれにゃいがにゃ」
「そうなの?」
「おみゃーたちに猫の手を貸そうと、パソコンのキーボードの上に座ったり、ベッドで寝てる主人の腹の上に乗ったり、広げてるノートの上に座って勉強を見たりしてるにゃ!」
「それすごい邪魔だからやめて欲しいんだけど……!」
「とにかく、猫を必要としてる癖に急に手のひら返しとはあんまりだにゃ!『猫の手のひら返し』にゃ!」
「そんな言葉ないけどね。う〜ん……。でも『猫の手も借りたい』って、猫の手が役に立たないから言ってるんでしょ?」
「にゃんだと!こんな手が役に立たにゃいだと!」
「じゃあペン持ってこの問題の答え書いてよ」
「……そろそろおやつの時間だから行くにゃ」
「逃げるな」
「しょうがない。かくなる上は……」
「何か手でもあるの?」
「ネズミの手を借りるにゃ」
「下請けやめろ」
「た……確かに人間にとっては使えにゃいかもしれにゃいが――ちょっと待つにゃ。僕には無理だが、ちゃんとした猫の手もあるはずにゃ」
「へー。どんな?」
「猫型ロボットの手とか」
「確かに夢とかも叶えてくれそうだけど怒られるぞ。著作権的に」
「あれ?違ったかにゃ?あれは青いタヌキだったかにゃ……?」
「あれは青いタヌキじゃないんだよ。ああもう!とにかく時間がないの!数学とかわけわかんないし!ほら!」
「あ〜、そこは連立方程式を使うんにゃ」
「……へ?」
「碁石の数と飛車の数をx、yと置いて、重さは分かってるから、それで解けるにゃ」
「……じゃ、じゃあこの問題は?」
「そこは図形Aと図形Bが相似だから、図形Bの辺の長さを出せばドローンの座標が出てくるにゃ」
「手は使えないのに頭は使える!!っていうかこの問題文、何がしたいんだろう!?」
「まったく、学校で習ってるはずなのに……。先生がかわいそうにゃ」
「この調子でどんどんお願いね!」
ガチャ
「あ、母さん!おはよう!」
「あんた全然起きてこないと思ったら、誰と喋ってるの?」
「え?クロと喋って……」
「にゃー」
「……え?」
「あんた大丈夫?相談相手クロしかいないの?ママはいつでも相談に乗ってあげるわよ?」
「……あ、いや、これは違うの……。クロが喋って――」
「にゃー」
「……大丈夫、別に恥ずかしいことじゃないわ。今は前と違って病院にも行きやすいから……ね、ほら。何か悩みがあったら言ってね」
(なんか勘違いされてるー!)
「にゃー」
猫の手を借りようとしたら怒られた あーく @arcsin1203
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