第3話 出会い
東北地方にもようやく桜の便りが届こうかという4月。ここ、秋田県黄金台町はまだ雪の残る景色が広がっている。肌寒い中、葵玲央あおい・れおと田浦昴たうら・すばるの入学する県立黄金台高校の入学式が行われている。
入学式前日に発表されるクラス分け。高校へは町内各地や近隣の町から集まるため、全く顔を知らない者がほとんど。別々に高校に登校してきた玲央と昴だったが、体格の大きい昴を玲央はすぐに見つけ、クラス分け表の前に立っていた。
「どうやら別々のクラスのようだなぁ。」
「ああ。昴は1-A、俺は1-Bか。」
黄金台高校1学年の全クラスはAからGまで7クラス。クラス表の前で友達同士同じクラスになって喜ぶ者や、別々のクラスで残念がる者など、多くの新入生達でごった返していた。
校長の長い話や、来賓のよく分からない話などが終わり、つつがなく入学式が終わって新入生達はそれぞれの教室に帰り、最初のホームルームが始まった。
「皆さん、おはようございます。改めまして担任の有屋紫乃ありや・しのです。これから1年間よろしくお願いします。」
1-Bの担任の有屋先生が挨拶したあと、生徒の自己紹介の時間が始まる。出席番号順、1番は玲央だった。玲央の言うべきことは最初から決まっていた。
「出席番号1番、葵玲央あおい・れおです。俺の夢はサッカーワールドカップで優勝することです!その前にここでサッカー部を作って全国制覇を目指します!」
高らかに宣言した玲央。クラスメイト一同に失笑が広がったが、玲央は全く気にしてなかった。そして宣言を終えて自分の席についた時、後ろの席から声をかけるものがいた。
「おい、お前サッカーやってんのか?」
玲央が後ろを振り向くと不機嫌そうにこっちを見る男がいた。
「俺は赤江光陽あかえ・みつあきだ。全く、俺が言おうとしたことを先に言われるとはな…」
「赤江くん、君もサッカーやってるのか?」
「当たり前だ。小学校からずっとサッカーしてる。だからこそお前の宣言が気に食わん。」
赤江がさらに何か言おうとした時…
「出席番号2番、赤江光陽君?自己紹介まだかしら?」
やや低い声で呼びかけた担任の有屋先生がこちらを睨んでいた。
「やっべ。いいや、後で話がある。葵だっけか、逃げんなよ。」
そう言って赤江は自己紹介に立っていった。
ホームルームが終わり今日の日程は終了、みんな帰り支度をしていた頃、玲央を赤江が呼び止めた。
「葵。話があるって言ったな。とりあえずグランドについてこい。」
「なんだよ。決闘でもやる気か?」
赤江の後をついて行こうとした玲央が聞くと、赤江は頷いた。
「まぁ、決闘みたいなもんだな。俺とPK勝負だ。」
理由も分からないままついて行く玲央だったが、PK勝負と聞いた途端にワクワクし始めた。
グランドに向かおうとする玲央と赤江、それを見つけた昴が駆け寄ってきた。
「玲央、早くも友達ができたか。」
「いや、そういうわけじゃないんだけど。」
ふいに赤江が昴に話しかける。
「葵の友達か?ちょうどいい。俺らの勝負を見届けてくれ。」
有無を言わせないまま昴も同行し、グランドに向かった。何も聞かないままだったが、玲央の夢を知る昴は内心ではサッカー部に入ってくれるかもと期待していた。
そして、やや寂れたグランドにあるサッカーゴールの前に立つ玲央と赤江。ここから、想像を絶するような二人のPK戦が始まろうとしていた。
蹴球の聖域ーサンクチュアリー 赤川ユキ @akagawayuki
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