仕事で忙しく世界を飛び回る両親によって長年一人暮らし状態の男子高校生・一条春都の一番の楽しみは食べること。
ごく普通の高校生として高校へ通学し、仲の良い友人と喋り、授業を終えて一日の疲れとともに空腹を覚えて帰宅する夕暮れ時。その日その日に自由気ままに食べたいものを作って食べる。
からあげ、生姜焼き、カレー、ミートソーススパゲッティ、オムライス、炊き込みご飯……日常的で飾らない素朴な料理の数々に共感を抱きます。
ときには友人のためにお弁当をこしらえてみたり、たまに自宅に帰ってくる両親のために腕を奮ったり、インスタントラーメンやフライドポテトのようなジャンクフードを夜食につまんだり、何気ない日々の食事風景に日常の幸福を感じます。
贅沢な外食などせずとも、好きなときに好きなものを好きなように食べる、それだけで身も心も満たされる。
平凡な毎日の食事が、かけがえのない特別なものに思わせてくれる一作です。
(「グルメ特集」4選/文=愛咲 優詩)