ゲーム配信者のおっさん、レトロゲーのレベル上げがあまりに単調できつ過ぎるのでリアルに猫の手を借りる

明石竜 

第1話

「このゲーム、レベル上げがマジきつ過ぎる。必要経験値のわりに貰える経験値

少な過ぎ! しかも敵地味に強くて一戦でけっこうHP削られるし、敵とエンカウントする場所からセーブ地点まで遠過ぎ。これはどこでもセーブ機能があるからまだマシだけど、実機でリアルタイムで全クリしたやつら、マジで凄過ぎだろ」

 春のある日、ゲーム配信で生計を立てているおっさん(顔出しは無し)は、最新ゲーム機でオンライン配信されてまもない、発売されたのは平成初期のレトロゲームについて、そんなことを呟きながらめちゃくちゃ楽しそうに実況していた。

「早くストーリー進めたいところなんですが、今のレベルのままだと一撃で

全滅させられそうなんでね、本日も引き続きレベル上げです。ただね、何十時間も同じ作業続けてたらさすがに飽きて来ますよ。レベル上げの単調作業、あまりにもつまらなさ過ぎてきつ過ぎるんで、リアルにペットの猫の手を借りることにしました。こいつ、任五郎っていう名前なんすよ。格好いいでしょ?」

 配信者のおっさんはそう伝えると、ペットの三毛猫を画面に映した。

 するとかわいい、癒されるなどなど、好意的なコメントが一気に増えた。

「このゲーム、レベル上げがしやすい場所として、ドラッグストアやホテル付近にいるNPCに話しかけると戦闘になって、何度も戦える敵がいるスポットがあるんで、その場所でこの子にAボタンを連打させて、パーティ3人全員レベル99まで上げていこうと思います。頼むぞ任五郎」

 配信者のおっさんはそう伝え、目的地に辿り着くと任五郎の肉球をコントローラのAボタンに添えさせた。

 その後、配信映像は猫がひたすらAボタンを押し続けるだけのものに。

 おっさんの声だけの時よりも視聴者数が大幅に増えた。

「もうネコだけの配信に切り替えろ」「おっさんはもう引退だな」

 というコメントも。

 結果的に、配信者のおっさんの広告収入は先月よりも上がったのだった。


 その後、リアルに猫の手を借りて自動レベル上げシリーズが終わると、またおっさんの声だけのゲーム実況に戻り、視聴者数は大幅に減少してしまったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ゲーム配信者のおっさん、レトロゲーのレベル上げがあまりに単調できつ過ぎるのでリアルに猫の手を借りる 明石竜  @Akashiryu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ