超人戦線ナゾメンジャーvsジオ・ベータリアン -業改人Xの野望!-

人生

 俺達の戦いはここからだ!な、秋クール




 ねえキミ、かわぁいいねぇ、ちょっとお兄さんたちとイイコトしない?

 今ねぇ、キミみたいなかぁいい子をスカウトしてるんだぁ――



 ――助けてー! ジオ・ベータリアンの戦闘員スカウターよー!



 プロデューサーを名乗る怪しい組織『ジオ・ベータリアン』――彼らはアイドルのスカウトを装っては人攫いを繰り返し、戦闘員『業改人ごうかいじん』に改造していた――



 そんな悪夢の都心に現れた、正義のヒーロー!



「流れる血潮は情熱のマグマ! アカレッド!」


「海か空かはたまた宇宙! 清廉なるアオブルー!」


「風属性か木属性、つまりどちらも大自然! ミドリグリーン!」


「先行、閃光、待ったなし! とにかく早いぜキイロイエぃロー!」


「ワインレッドじゃないわマゼンタよ! モモピンク・リメイン!!」



 ――五人揃って! 超人戦線ナゾメンジャー!



 人々の窮地にどこからともなく現れるナゾメンジャー――彼らの正体を知る者はいない。なぜなら、彼らは普段、どこにでもいるような一般人――



「アカレッド! そんな、怪人の攻撃を喰らって、変身が――」



 バキン!

 ある時、どこからか飛んできた攻撃を喰らったアカレンジャーの正体が――



「嘘、公正こうせいくん……?」



 その幼馴染みの少女・いろりコハルに発覚してしまう!


 正体を知られてしまったヒーローは敵組織の恰好の的! 社会も彼らを放ってはおかない――秘密を知られてしまった先代モモピンクはそうして引退、現在は二代目である――アカレッドこと正門まさかど公正はまだヒーローでいたかった。ジオ・ベータリアンを殲滅し、この幼馴染みが平和に過ごせる世界にするまではヒーローを辞めることは出来ない――ヤツらに家族を奪われた彼女のためにも!


「大丈夫、私、誰にも言わないよ――二人だけの秘密、ね」


 そうして!

 秘密を抱えた二人の青春の日々は幕を開けたのである――第一章・完!




 二人の距離は急速に縮まっていた。

 秘密を抱えたことをきっかけに、これまで幼馴染みだった――そしていつの間にか疎遠になっていた――関係が変わり始めたのである。


 とある休日、公正とコハルは一緒に遊びに出かける――はずだったのだが、


「……何!? ジオ・ベータリアンが現れた!? ――ごめんコハル、俺すぐに行かないと!」


「えー……そうやっていつも……。たまにはサボってもいいんじゃない?」


 コハルも自覚はしていたのだ。自分は今、「悪い子」だと――彼の秘密を知る自分の「わがまま」を、彼は無視できないのだ。


「ほら、だって五人もいるし……」


「でも、女の子と遊んでて出撃できませんでした、なんて――カッコ悪いだろ。それに、それでコハルとのことがバレちゃったら元も子もないし――イエローじゃないけど、早く倒して戻ってくるって!」


「……そうだね。ごめん――悪いのはジオ・ベータリアン。早くあんな奴らやっつけて、平和に遊べるようにするべきだよね! これ以上、私みたいな人を出さないように!」


「ああ! じゃあ、行ってくる――」


「頑張って、私のヒーロー!」


 ――そう、ヒーローは正義の味方、社会の平和を守る存在。恋より仕事、それがみんなのため――引き留めるべきではない――


(〝私だけのヒーロー〟じゃ、ダメだよね……)


 コハルは寂しさを押し殺し、去っていくアカレッドの背中を見送った。


 その直後である。


「きっひっひ……」


 一人の老婆が現れる。

 その名も、ドクトル・クレバー――ドクター・クレージーと対をなす、ジオ・ベータリアン幹部にして研究者――




 アカレッドこと正門公正と炉コハルはそれからというもの、時折ケンカをするようになった。

 意見の相違、すれ違い……ラブコメの定番である、とモモピンク・リメインはアカレッドの相談に乗り――その距離を急速に縮めていった。


「何!? モモピンクが……!?」


「あぁ、変身して人々を襲ってる――そんな映像が拡散されてるんだ! ジオ・ベータリアンの仕業だろうが、当のモモピンクと連絡がとれない――」


「装備のGPSによれば、郊外の工場地帯にいるみたいだ――」


「大変だ! アカレッド、お前の学校にジオ・ベータリアンが!」


「なんだって!?」


 モモピンクは恐らく、囮だ。超人戦線がそちらに向かっている隙に、新鮮で活きの良い学生たちを拉致・監禁そして改造するのが敵の狙い――だがモモピンクは洗脳されているかもしれない。だとすれば、戦線が学校に向かっている隙にモモピンクが都心で暴れ回る恐れもある――


「僕たちに対する社会的な評価――怪人を倒すためとはいえ、毎週のように巨神兵器巨大ロボで街を壊して回っている僕たちの評価をこれ以上落とせば、世間まで僕らの敵に回るだろう」


「二手に分かれるしかない、か――しかし、モモピンクを倒さずに止めるとなれば、怪人相手よりも戦力が必要だぞ。おまけに怪人も待ち構えているかもしれない……」


「学校は俺に任せてくれ――俺の学校だ! それに俺の方が近い……登校中だしな! だから三人はモモピンクを!」


 そして、アカレッドが学校に、モモピンクの救出のため他三人が工場地帯へと向かったのである――




「モモピンク! 無事か!?」


 工場地帯で待ち構えていたジオ・ベータリアンたちを瞬く間に撃退し、アオブルー、ミドリグリーン、キイロイエローは囚われのモモピンクの救出に成功した。


「みんな――」


「良かった、洗脳はされていないみたいだな。やはり、あの映像は――」



 カチ、コチ



「そっか……アカレッドは、来てくれなかったんだ……」


「どうした?」



 カチ、コチ



「おい、なんか変な音がしないか?」



「みんな、ごめんね――私、改造されちゃったの――〝業〟を、解放されてしまった――私は自分が何者なのか、自覚してしまったの……」



「おい、何を言ってるんだ――」



「この音は、私の赤ちゃん――私のお腹の、爆弾よぉおおお!」




 同刻――アカレッドは自らの通う高校に到着した。


「アカレッド! 来てくれたんだな! 他の四人は……? いやそれより、生徒たちの避難は完了した! 怪人は教室にいる!」


「ありがとう! せんせ――げふんげふん、協力感謝します民間人の方!」


 アカレッドは怪人のいる教室へと急行した。その道中、数体の戦闘員を打ち倒す。自分一人でもやれる――湧きあがる自信と安心。一方で、コハルと連絡が取れないことが気がかりだった――


 教室に到着する。さっきまで、まるで自身の居場所を報せようとするかのような破壊音が響いていたのだが、今はその音が聞こえない。アカレッドは恐る恐る、教室の中へと踏み込んだ。


 そこには、一人の――


「こ、コハル! 良かった、無事だったんだな――」


「良かった――公正くん、こっちに来てくれたんだね」


「? というか――今の俺はアカレッド! 誰かに聞かれてたらどうするんだ! いや、それより! コハル、怪人は!?」


「私ね、時々思っちゃうんだよね――みんなに、私の彼がアカレッドなのって――バラしたら、どうなるかなって」


「おい、何を――」


「だって、みんな好き勝手言うんだもの。街を壊してるとか、怪人とグルなんじゃないかって――みんなのこと、必死に身を挺して守ってるのに、勝手だよね」


「そんなこと……。いやまあ俺もたまに考えるけども! それより今は――」


「だからね、ちょっとイラっときちゃって……虫の居所が悪かったっていうか――」



 バキン!



 と――アカレッドの横の机に亀裂が走る。



(い、今の攻撃は――)



 アカレッドは瞠目する――目の前の少女の腕が、奇妙に変質していた。



「公正くんが私を置いてっちゃったのが悪いんだよ――そのせいで私、改造されちゃったんだから……!」



 あはははははは! 悲鳴のような笑い声と共に、いくつもの机や椅子が謎の攻撃に晒され爆裂する。


「そんな、嘘だ……コハル……」


「ねえ、アカレッド……私のこともこれまでの怪人みたいに、倒す? 殺すぅ? そうやってモモピンクに乗り換える……? でもざんねーん!」


 その時である。



 ドゴォオオオオン――



「な、なんだ……!? 地震!?」


「はい、これで他の四人はいなくなったよ――これでヒーローはアカレッド一人。もしもその正体が知られちゃったら、まともに活動することなんてできなくなるよね。だから――秘密を知ってる私の事、どうしたい?」


「う、ううう……ふうーっ、ふぅーっ!」


「正義の味方だもんね、社会の平和を守るんだもんね、怪人は一匹残らず殺さなくっちゃねぇ~? 私を殺すの? いいよ、それでも――私を殺す、私だけのヒーロー――でもね、」


 バキンバキンバキン!


「安心して? ……もうね、ジオ・ベータリアンは人を襲わないよ。私があの組織を――ぶっ壊したから! だから、私が最後の怪人! これが最終回! 私を殺して終わりにする? それとも――ずっと、私だけのヒーローでいてくれる……?」


 私を見張って、私を守って、私がもう悪さをしないように、一生そばにいて――



「うわああああああ……!」



 そうして!

 秘密を抱えた二人の凄惨な日々は幕を開けたのである――第二章・完!




                   ■




「――て、おぉい! これで終わり? また来週? ……え? 来週はお休み!?」


「来週は駅伝かゴルフがあったんでしょ。というか姉ちゃん、『高校生にもなってニチアサとかwww』って俺のこと馬鹿にしてたくせに、韓ドラにハマった専業主婦並みに食いついてんじゃん」


「いや、だって――あの攻撃ってさ! アカレッドの正体バレた時の! ていうことは最初から――怪人に家族を奪われたっていうのも、『組織仕事』に奪われたってことなんじゃないの!? 親とかが! あの謎の怪人の正体がコハルちゃんってことは、あれを『姫』って呼んでたジジババってまさか本当の祖父母!?」


「うわ、考察とかしてる。ていうか他の四人も気にしてあげなよ。まあ、今に分かるから。その辺、俺もネットでネタバレ見ちゃったし」


「あ! そうだこれ録画じゃん! 録りためてたやつじゃん! はよ続き続き」


「はいはい――」


 呆れながら、弟は録画を再生するのであった。



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