日本史の先生は私だけのヒーロー
郷野すみれ
私だけのヒーロー
−2023年1月
日本史の先生は、私だけのヒーローだ。
もともと日本史が好きだったこともあり、放課後に質問に行った。それからよく休み時間や放課後に社会科資料室に通うようになった。
落ち込んでいる時だって、笑っている顔を見られたら気分が浮上するし、話せたら心が躍る。
友達には笑われるけど、私は本気だ。20代半ばの先生に付き合っている人がいないことはリサーチ済み。
志望校で親と揉めたり成績が伸び悩んでいたりで苦しんでいた時にも、先生に話を聞いてもらうだけで心が軽くなった。一番苦しかった受験期の秋は先生のおかげで乗り越えられた。
でも、こんなに私はアピールしているのに、先生は「子供の言うことだから」「先生と生徒はダメ」と取り合ってくれない。その上、私がいる間はドアを開け放しておくのだ。どんなに廊下が寒くても。
だから私は決めた。
1月10日、久しぶりの学校の日。私は授業が終わった後、真っ直ぐ社会科資料室へ向かった。
「せーんせい、お久しぶりです! あけましておめでとうございます!」
「あけましておめでとう。またお前か……。こんなところに来てないで、数学やったほうが良いんじゃないか?」
「ぐっ……正論。でも、それより、今日が何の日だかわかりますか?」
先生は机の上のカレンダー付きのデジタル時計に目を向ける。
「知ってるぞ」
私は思わずドキッとした。
「共通テストまであと4日だよな」
「違うんです!」
私のドキドキを返して。
「今日は私の誕生日なんです! だから先生、私の誕生日プレゼントとして私と付き合ってください」
「ダメだって言ってるだろ。大人が未成年と付き合ったら犯罪なんだぞ」
「誕生日が来て18歳になったから、もう私は未成年じゃないんです! 18歳成人制度万歳!!」
先生は呆然と私を見る。
「とりあえず、帰って勉強しなさい」
「はーい」
次に話すのは卒業式かな。返事が楽しみだ。
日本史の先生は私だけのヒーロー 郷野すみれ @satono_sumire
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