その名は旧一! とある雨の日、千佳を守るヒーローの初登場なの。

大創 淳

第八回 お題は「私だけのヒーロー」……思えばいつも、一人じゃなかった。


 ――僕だけのヒーローといえば、彼氏の太郎君と思うのだけれど、もっと昔から、ボッチの頃から、ずっと見守ってくれていた人がいた。……正確にいえば、人だった人。



 普通の人には見えなくて、

 僕にだけ姿も見えていた……永遠の十五歳の少年。とても温かく優しい幽霊さん。


 僕の伯父にあたる人で、お母さんのお兄ちゃんで、名前が旧一もとかず……と、変わった名前なので、とても印象に残っていた。僕は『僕』という一人称でも女の子で、千佳ちかなの。


 僕が初めて、旧一おじちゃんを見たのは、


 ……小学三年生の、雨の日。その帰り道、雨に濡れた舗道はやけに冷たかったのを覚えている。身震いするほど……。(お熱があるのかな)と思いきや、お家に入るなり体温計で測るも……三十九度五分を表示。フワッとする頭の中、ケホケホと咳も。遠くなる意識の中、ぼんやりと見えるのは天井。とても静かなの。苦しみも超えて……



 すると、いつの間にか少年が、僕を見ているの。……って、この頃の僕の一人称は僕ではなく『私』……少年は語り掛けるの。少年といっても、私よりもずっと年上……


「千佳、大丈夫だからな」と、何度も。


 すると、するとね、お電話が鳴るの。いつもいつまでも、自然に受話器が外れて通話状態。不思議なことは続いた。まるでママと私を引き合わせるかのように。……何を言ったのか覚えてないけど、その時にはもう真っ白な世界。……と、よく見たら病室だった。


「千佳、気が付いたのね」

 と、ベッドの傍にはママ……辺りを見渡すも……


「ママ、お兄ちゃんは? 私とずっと一緒にいたの」


 ママは語る。――「そのお兄ちゃんはね、旧一っていうママのお兄ちゃん。きっと千佳のこと守ってくれたのね。とっても優しい、私だけのヒーローなの」と。窓からお外を見れば、鮮やかな虹が掛かっていた。そして僕だけの、ヒーローとなった。


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その名は旧一! とある雨の日、千佳を守るヒーローの初登場なの。 大創 淳 @jun-0824

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