第464話 あなたは本当に自分ですか?
最初にダイラがカメラに向かって、深刻な表情で語り始めた。
「この話を聞いたら、きっともうスマホを見るのが怖くなる。」
クワヤマダが隣でツッコむ。「なんだよ、また新手の都市伝説か?」
「違う!これは俺が本当に経験した、パニックそのものの話だ!」
スマホから始まった“増殖”
すべてはある夜、スマホの異常から始まった。通知が止まらず、勝手に写真がアップされ、最後にはこう表示されたんだ。
「あなたをコピー中…」
次の日、玄関を開けると、そこに“俺”が立っていた。いや、正確には“俺そのもの”が。顔も声も何もかも同じ、完璧なコピー。
そいつはニヤリと笑ってこう言ったんだ。
「これから、もっと増えるよ。」
街中が俺だらけ
数日で、街は“俺”で溢れ返った。スーパーの店員も、電車の運転士も、路上ミュージシャンも、みんな俺。しかも全員が同じ行動を取るんだ。
「歯を磨けば、水不足だ。全員がおならをすれば、地球中の空気が汚染される。さらにくしゃみ!全員が一斉にしたら、音波で窓ガラスが割れて街は崩壊した!」
「いやいや、それはパニックすぎるだろ!」クワヤマダが大笑いしながら言う。
「でももっとやばいのは、特殊照明作家として俺が作品を作ろうとしたら、70億人が同じ材料を買いに走ったんだ。結果、材料が全滅!どんなクリエイティブも作れない世界だぞ!」
70億人の俺、全員海へ進む
やがて、“俺”たちは一斉に同じ行動を取り始めた。70億人が同じ歩幅で歩き、同じ方向へ進む。そして最後には、全員が海に飛び込むんだ。
その瞬間に気づいたんだ。
「70億人の俺がいても、何も新しいことは生まれない」
全員が同じなら、個性も驚きもない。ただの退屈な地獄だった。
終わりの一言でゾッとする真実
ダイラが真剣な顔で語り終えると、クワヤマダがぽつりと言った。
「それ、最後どうなったんだよ?」
「分からない。でも……今この瞬間、お前の後ろにも“お前”が立ってるかもな。」
クワヤマダが後ろを振り返り、慌てて叫ぶ。「やめろ!怖いこと言うな!」
カメラがゆっくりと引いていく。その背後、薄暗いスタジオの中に立つ“もう一人のクワヤマダ”のシルエットが――。
最後に画面にはこう表示される。
「あなたは本当に“自分”ですか?」
ダイラ物語 ビダイ物語 @kamibuu04
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