第463話 怪人べらぼう

「アートを見るたび、お前の前頭葉は壊されている。気づかないだけだ。」


――深夜のスタジオ――

空気が異様に湿り、蛍光灯が明滅している。壁一面に飾られた奇抜な作品たちが、何かを訴えるようにこちらを睨んでいた。


ダイラ:「なあ、クワヤマダくん。この部屋、息苦しくないか?いや、なんか“いる”感じがする。」


クワヤマダくん:「ぐふふ、ようやく感じたか?それ、怪人べらぼうの気配だよ。」


ダイラ:「怪人べらぼう?なんだそれは。」


クワヤマダくん:「人間がアートを見すぎると、前頭葉が揺さぶられ、ある日突然“べらぼう”に変身するんだ。美と狂気を超えた何かに――」


――次の瞬間、スタジオの電気が一斉に消えた。闇の中、作品たちがまるで生き物のように蠢き始める――


ダイラ:「おい、冗談だろ?これ、なんかのドッキリだよな?」


クワヤマダくん:「いや、違う。“べらぼう”は本物だ。そして、俺たちはもう限界だ。」


――突然、重く鈍い音が響き、壁に飾られた巨大な絵が裂けた――


そこから現れたのは、歪んだ自分の姿だった。

触手のように伸びる腕、裂けた口、目の奥に輝く狂気の光。それは、限界を超えた創造の化身、怪人べらぼうだった。


べらぼうになったダイラ:「お、おい!俺の手が!何だこの形は!?目の前が、光と色で埋め尽くされる!」


クワヤマダくん:「ぐふふ、ようこそ、べらぼうの世界へ。人間の前頭葉が耐えられる美の限界を超えたとき、俺たちは“創造の怪物”になるんだ。」


――スタジオの中で、すべてが変わる――

キャンバスが裂けて溢れ出す光、彫刻が叫び声を上げる。天井は崩壊し、空間はぐにゃりと歪む。


べらぼうになったダイラ:「止められない!何かを作り続けなきゃ、頭が焼ける!だけど、これは……これが“美”なのか!?」


クワヤマダくん:「そうだ、前頭葉を壊した者だけが知る“真の美”。でもその代償は、お前の人間性だ!」


――混沌が爆発し、創造の波が無限に広がっていく――


終幕:次にあなたがアートを見たとき、その胸のざわめきを感じたなら、それは始まりだ。怪人べらぼうへの道を、もう歩み出している証拠だ……逃げられないぞ。

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