帰り道、マフラー、雪だるま/アルとサン

 雪が降った。

 灰色の空から次々に落ちてくる結晶は、町を白く塗り替えた。

 道端には、久しぶりに積もった雪にはしゃいだ子供達の作品が並ぶ。

 たった半日で町に何体もの雪だるまが出現した。

「さっむい……」

 鼻までマフラーに埋め、寒さに耐えながら歩く帰り道。手には買い物袋。

 アルは藤色の目を細め、空を見上げる。曇り空なのに眩しさを感じるのは、周りに積もった雪のせいだろう。寒さと眩しさを我慢しながら歩いて行くうちに、住宅街に入った。

 洒落た家が立ち並ぶ中に、児童公園を見つける。公園の敷地内にはもちろん、雪だるまを始めとする数々の白い造形物がそこかしこに立っていた。高く積み上げられた雪の山と、その間にある踏み荒らされ雪と土の混ざった地面は雪合戦の跡だろうか。

「……?」

 公園の前を通り過ぎようとした足が止まる。見覚えのある姿を見た気がした。いや、いる。

 ブランコの横で、大きな雪玉を作っていた少女がアルに気付いた。

「アルくーん!」

 向こうもアルに気付いて大きく手を振っている。人違いではない。

「……サン」

 黒のポニーテールが元気に跳ねている。制服のままここにいるということは、下校途中だったのだろうか。鞄がベンチの上に置かれている。

「寄り道かよ」

「小さい雪だるま見てたら、作りたくなっちゃって」

 へへっと笑う頬が、ほんのりあかい。

「寒いのに……」

「寒いからこそだよ! アル君は……もう制服から着替えたんだね」

 サンの視線がアルの巻いているマフラーに止まる。彼女が巻いている物と色違いの手編みのマフラーだ。

「使ってくれてるんだね」

「……まあな」

 サンの笑顔に、アルは視線を逸らして答えた。

 着け始めた頃は周りが少し騒がしくなったけど、温かいし、せっかく貰ったのに使わないのはもったいない。手作りの物には作り手の思いがこもってることも知っている。

 色々理由を並べてみるけれど、一番はサンの笑顔が見られるから。

「アル君、顔赤いよ?」

「寒いからな」


 この気持ちはどこから来るのか。





===========

:まとまらない…;

 アルとサン。とりあえずお題見付けてこの二人しか思い付かなかった。二人の組み合わせは『連世界』の『蒼穹の下、丘の上』でも見られます。本編には全く関係ないセルフ二次創作です。


御題:帰り道、マフラー、雪だるま

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赤い湖とりんご短編集 燐裕嗣 @linyuushi

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