解説

<注意>

 これは、短篇「ドロステ・エフェクト」をより楽しんでいただくための解説・後書きです。必ず、本編をお読みいただいてからご覧ください。






 表題の「ドロステ・エフェクト」もといドロステ効果は、再帰的な画像のもたらす効果のことを指します。あるイメージの中にそれ自身の小さなイメージが、その小さなイメージの中にはさらに小さなイメージが、その中にも……といったものです。その効果を取り入れたものが本作です。

 本作の登場人物の立ち位置はこのようになっています。



あなた 本作(ドロステ・エフェクト)を読んでいる。 

人間  本作の登場人物。「物語」を読んでいる。

男   人間が読んでいる「物語」の登場人物。「小説」を読んでいる。



 文面に表すと、「『小説を読んでいる男』を描いた物語を読んでいる人間」の物語をあなたが読んでいる。といった状況です。

 物語の終盤で、男が「人間に自分を読まれている」ことに気づきます。「自分を読まれる」というと少し変ですが、ここでは「自分が生きている世界が小説であったことに気づいた」という解釈で問題ないです。男は人間に向かって叫びます。人間は気味が悪くなり、直ぐその本を閉じます。そして、男と同じように、人間も「自分の世界が小説であること」に気づきます。そして、自分を読んでいる対象であるあなたに向かって、男と同じように叫ぶ...というのが、このお話です。


 私が一番伝えたいことは最後にも書いたように、「自分の世界が本当に現実であること」の確証は何処にもない、という事です。あなたが朝起きて、顔を洗って、朝ご飯を食べる一連の行動は、


「朝、〇〇は目を覚まし、顔を洗い、朝食を食べ始めた。」


という小説の一節かもしれないのです。

 勿論、これが真実であるとは言っていません。本当にこの世界が現実かもしれないし、著名な作家が書いた短編かもしれない。はたまた図書館に置いてある分厚い小説かもしれません。

 どうであるかは誰にも判らない。でもいつか、貴方が自分の読者に向けて指をさして叫ぶ日が来るかも、と考えると......


......少し怖いですね。

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ドロステ・エフェクト 米教 @komekyo

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