博物館と温泉のある町

博物館と温泉のある町

　その町には眼球を展示している小さな博物館があった。

　興味本位で見に行くと、子供の頃にテレビや雑誌で見た芸能人やスポーツ選手、政治家や学者などの眼球が、簡単な経歴を添えられた顔写真とともに瓶にホルマリン漬けにされて並んでいた。それなりに見応えがあったが、本当に偉人や有名人のものかどうかは疑わしかった。眼球だけでは誰のものかわかりようがないからだ。

　町外れにある温泉宿に行くまでの間に、眼帯をしている人を三人ほど見かけた。宿に着くと、女将はこんなさびしい町へようこそと深々と頭を下げた。温泉のことを聞くと顔をあげてにっこり笑ったが、よく見ると片方の目が義眼だった。