第五話 コンビニエンスストアッッ!!

 勇者マリー・プライドとザーマ社の社員一行はダンジョンの階層を進み、休憩エリアのコンビニエンスストアまでたどり着いたのであったッ!


コンビニの扉は足を踏み入れようとすると、自動的にスライドし、軽快な入店音で客人たちを歓迎するのであったッ!




「イラッシャイマセ」




 重厚なゴーレムがレジ越しから挨拶するッ!


圧倒的威圧感ッッ!!




「すげー! これ、軍用ゴーレムじゃね?」




「強盗対策にしてはちょっと過剰じゃない?」




「いえ、ここに来る方々は大体戦闘力を持った冒険者や傭兵さんなので、これぐらいの戦力を用意するくらいがちょうどいいのですよ~」




 解説するガイド冒険者さんッ!


ここを訪れる冒険者や傭兵が必ずしも善良とは限らないッ!


万が一、良からぬことを考える輩を何時でも排除できるように、今日も店員ゴーレムは目を光らせているッッ!!




「社長、いい加減そろそろ武器変えたほうが良くない?」




「あらッ? わたくしのこの『撲天丸』じゃ不満ですことッッ!?」




「だって、それ売店で買った『ヒノキの棒』じゃん……」




「サイキョーの勇者であるこのわたくしには、強力な武具など不要ですわッッ!! おーっほほほッッ!!」




「いや、社員の安全が掛かっているから舐めプしないで貰えるかな……?」




 武器を新調してもらえるように、傲慢勇者マリー・プライドに対し必死に説得を試みるオサム・タナカッ!




「仕方ありませんわねぇッ! そこまで言うならオサム・タナカッ! あなたがこのわたくしに相応しい武器を見繕いなさいですわッッ!!」




「やっと変えてくれるか…… すみませ~ん店員さ~ん」




「ハイ、ナンデショウカ?」




「この店で一番性能の良い武器は何ですか?」




「少々オ待チクダサイ」




 そう言うと店員ゴーレムは武器を三つほど持ってきてくれた。




「コチラノ、『ブロードソード』、『モーニングスター』、『クロススピア』ガ当店ノオススメ、ニナリマス」




「勇者が剣以外の武器を使うなど言語道断ですわッッ!!」




「じゃあ、こちらのブロードソードを下さい……」




「デハ、オ会計598ゴールド、ニナリマス」




「はい、598ゴールド」




「オ買イ上ゲ、アリガトウゴザイマス」




 早速購入したブロードソードを、勇者マリー・プライドへ献上するオサム・タナカッ!


それを早速鞘から抜き、天高く掲げるマリー・プライドは誇らしげに宣言するッ!




「今からお前は『勇剣ブレイセイバー』ですわッッ!! この勇者マリー・プライドの剣となれる事を誇らしく思いなさいッッ!! おーっほほほッッ!!」




「店内デノ抜刀ハ、オ控エクダサイ」




 そうすると、突如コンビニ内の別の場所が騒がしくなったッ!




「大変だ~!! 万引きだ!!」




「え!? そんな!?」




 店員ゴーレムは、重厚な見た目とは裏腹に迅速な移動で駆けつけるッ!




「ドウカサレマシタカ?」




「コイツが万引きするところを見たんですよ! 証拠もちゃんと撮ってありますよ!」




 客人の冒険者の男たちは、携帯端末を取り出し、万引きの映像を見せてきた。




「だって! あなたたちがやれって……」




「あぁ!? 俺たちに濡れ衣を着せんのか!? 万引きした挙句、冤罪までかけようなんて最低な奴だな!!」




「あぅ……」




 万引きの容疑者の少年冒険者は、下衆な笑みを浮かべる男たちに何も言い返せなかった……ッ!




「万引キハ、犯罪行為デス。 万引キハ排除シマス」




 騒ぎに他のザーマ社の社員たちも集まってきたッ!




「え? 万引き!?」




「あんな子供が……」




「もしかしてイジメ……?」




「これ、ヤバいんじゃない……?」




 周りの視線にお構いなしに、内臓のペイントボールキャノンを展開する店員ゴーレムッ!


対強盗用の対人兵器の一つであるッッ!!




「あわわわわ……!!」




「おぉ、ヤベー!」




「マジで、軍用ゴーレムの性能を間近で見れるとは思わなかったわ~!」




 下衆な笑い声を上げながら、携帯端末で少年冒険者を撮影する男冒険者たちッ!


少年冒険者の運命や如何にッッ!




「ちょっと待……!」




 ザーマ社の社員の一人が止めようとした瞬間ッ! ペンイントボールキャノンの弾丸が撮影していた男冒険者たちに炸裂するッッ!!




「ぎゃひぃん!?」




「うべらっぱ!?」




 ペイントボールの弾丸は小さな爆発を起こし、屈強な男冒険者たちの体を吹き飛ばしたのであるッッ!!




「万引キ強要ハ犯罪デス。 店内デノ犯罪行為ハ排除シマス」




「店員さん……」




 店員ゴーレムは、少年冒険者から商品を回収すると、ペイント溶液まみれの男冒険者たちを店の外へ投げ捨てた。


そんな店員ゴーレムの姿を見つめていた少年冒険者は少し頬を染めていたのであるッ!




「店員さん鬼つええ!!」




「店員さんかっけぇ!!」




「店員さんが人間だったら惚れてたわ!!」




 ザーマ社の社員一同、拍手喝采ッッ!!




「すみませ~ん、大丈夫ですか?」




 少年冒険者の元へ駆け寄るガイド冒険者さんッ!




「ぼ……僕は大丈夫です! 店員さんのお陰で……!」




 少年冒険者はさらに続けた。




「あいつらに商品を盗むように脅されて、やらないとひどい目に遭わせると言われて……」




 少年冒険者は次第に目に涙を浮かべていった……ッ!




「僕……ずっとあいつらにいじめられてて、逆らおうと思っても、僕の力じゃ全然太刀打ちできなくて……!!」




「ずっと辛い思いをしてきたんですね……。 私たち冒険者ギルドの監督不行き届きのせいで辛い思いをさせてしまい、すみませんでした……!」




 深く頭を下げる、ガイド冒険者さん。


年下の人物にも礼儀を欠かさないしっかりとした大人であるッッ!!




「あの冒険者たちは私たち冒険者ギルドが責任を持って処罰します! あなたも今度は良い仲間に巡り合える事を祈っていますよ~!」




 にっこりと少年冒険者に微笑みかけた後、ガイド冒険者さんは外で倒れている男冒険者たちを拘束しに行ったのであったッ!




「さっきの店員ゴーレムさん…… カッコよかったなぁ……」




「情けないですわねぇッ! あなたッッ!!」




 そんな少年冒険者に近付く傲慢勇者マリー・プライドッ!




「え、何ですか……?」




 少年冒険者困惑ッッ!!




「あなた、そんなヨワヨワそうな佇まいをしているから舐められるのですわッッ!!」




「見た目の貧相さなら社長も負けてないけどな」




 傲慢勇者マリー・プライドは品定めするかのように少年冒険者を見つめるッ!




「ふむッ! 決めましたわッッ!! あなたを今からこの勇者マリー・プライドの弟子にしてさしあげますわッッ!!」




「え、嫌です……」




「このサイキョーの勇者マリー・プライドの弟子になれることは非常に光栄なことなのですわよッッ!! あなたもこのわたくしの佇まいを学んで勇者の何たるかを学ぶと良いですわッッ!!」




「いや……僕は勇者じゃなくて冒険者なんだけど……?」




「さぁ、弟子よッッ!! このマリー・プライドの背中についてくると良いですわッッ!!」




「どうしよう、この人話が全然通じない……」




 困り果てる少年冒険者に、オサム・タナカが割り込んでくるッ!




「コレは無視して構わない。 大事なのは君がこれから何をしたいかだと思うんだ」




 オサム・タナカは続けるッッ!!




「君はまだ若い…… 夢があるならそれを大事にするんだ。 人間にとって若さと夢は宝物だが、それが大事だと気付けるのは既に失ってからの方が多いんだ…… だから君も、その場のノリと勢いでやりたいことを棒にふるのは非常に勿体ない…… よく考えて、自分の将来を選ぶんだ……!」




 オサム・タナカの眼差しは、どこか遠くを見つめていた……ッ!




「僕は…… 僕はそれほど賢くないし、お金も無いけど、体だけはそれなりに丈夫だったから冒険者をやっていたんだ……」




 少年冒険者は新たに決意を抱いたような顔つきで続ける。




「でも、やりたいことがやっと見つかったんだ……! 僕はゴーレム職人になりたい!!」




「いいぞ!! 君は俺がかつて持っていなかったものを持っている! それを決して手放すんじゃないぞ!!」




「はい!!」




「ちょっとッッ!? オサム・タナカッッ!! 彼はわたくしの弟子にするのですわッッ!! 邪魔をしないでくださいますッッ!?」




「社長はその場のノリと勢いで人の将来の夢を邪魔するんじゃない!!」




 マリー・プライドは弟子の獲得チャンスを妨害されてしまって駄々をこねているッッ!




 ざまぁポイント4獲得であるッッ!!




「そいえば、前に名刺を交換した下請けのゴーレム製造業者が、新人を募集していたな…… もし良ければ君を紹介してあげようか?」




「いえ、流石にそこまでしていただくのは悪いですよ……!」




「人のコネは社会人にとって大きな武器の一つだ。 それを最大限に利用するのは何も悪い事じゃないさ」




「……わかりました! よろしくお願いいたします!!」




「よし、いい返事だ!!」




 オサム・タナカは久しぶりに希望に満ち溢れた若者を見て、嬉しくなったッ!




(こんな若者ばかりなら、国の将来も明るいのだがな……)




 そんな事を考えていると、コンビニの入店音が鳴り響き、新たな客人が入ってきたッ!




「バリー殿~!! 拙者もうお腹ペコペコでござるよ~!!」




「私も、アソコがウズウズしてるんですよ♡ 早く帰ってバリー・アフリー様のモノでお腹一杯にしたいです♡」




「おい、やめろ!! そんな言い方されるとめっちゃ誤解されるだろうが!?」




「バリー・アフリーさんモテモテなのです……」




 三人の女性を連れた、青年がコンビニへ入店してきたのであったッ!




「あらっっ!?」




「あ……」




 ふと目が合う傲慢勇者マリー・プライドとバリー・アフリーと呼ばれた青年ッ!


一体どうなってしまうのかッッ!?




 圧倒的つづくッッ!!

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追放勇者マリー・プライドッ!! 戦闘が出来ないお荷物と追放され、キャリアを雑用ロボに奪われたが、努力した結果美少女ハーレムに囲まれて幸せです。 だから今更戻って来いと言われてももう遅いわッッ!! kahn @robotworker2000

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