序章
辺りに激しい轟音が鳴り響いた。集落は激しい炎に包まれ、人々が悲鳴を上げながら逃げ惑っている。
目の前で、黒い鎧に身を包んだ女性が不気味な表情で笑っていた。
女性の顔が空中に舞っている火の粉に照らされ、その不気味さを一層に際立てている。
「もう、戦えなくなったのか。白の神の娘よ。」
黒い鎧の女性…黒の神が白い鎧を身を包んだ少女に対して口を開いた。
少女…白の神の娘は息を切らしながら黒の神に言い放つ。
「黒の神…あなたの目的は何なの!?」
その一言を聞いた黒の神は声を上げて笑った。
「目的…?面白い事を聞くじゃないか。白の神の娘よ、私の目的がそんなにも知りたいか?」
黒の神は再び不気味な笑みを浮かべると少女に
「この世界に生きている人々を全て殺すのが目的さ。人間というものは残虐な行為を平気で行う。
だから私は人間を抹殺する。一人残らずな。そして、世界を一から創りなおすのさ。」
黒の神は、少女の言葉を待たずにそっと手を差し出してくる。
「白の神の娘よ、この私と一緒に世界を創りなおさないか?」
少女は何も答えずに竜の翼で造られた神剣を黒の神目掛けて振り上げた。
答えなど初めから決まっている。私は人々を、この世界にある全ての生命を守りたい…。
少女は心のなかで固く誓った。今、少女の母と父、弟、姉は黒の神の眷属達と戦っている。
家族を、この世界に生きている生命を見捨てる訳にはいかないのだ。
少女が黒の神を斬りつけようとすると、黒の神も神剣を振り上げて少女の刃を食い止めた。
神剣と神剣が激しくぶつかり合い、激しく火花を散らす。
「言っても聞かない愚か者め…潔く私の服属下になればいいものを…」
黒の神は忌々しそうに呟くと神剣に渾身の力を込める。
少女はそれを受け止めきれずに、その身体は無惨にも地面へと叩きつけられる。
「白の神の娘よ、お前の実力はこんなものか…。」
黒の神が残念そうに呟く。それと同時に黒の神の神剣が強大な力を帯びて赤く発光する。
黒の神は凄まじいエネルギーを放つそれを、思い切り地面に突き刺した。
地中で何かが弾けた音が響いた。そして…凄まじい轟音を立てながら大地が崩れ落ちる。
少女はどうすることも出来ずに崩れていく大地と共に暗闇へと落ちていった。
「さらば、白の神々達よ…」
黒の神がそう呟いたのを最後に少女の意識が途切れていく。
愛する家族の無事を祈りながら……。
失われた記憶〜自分が何者なのかを探し求めながら NAZUNA @2004NAZUNA
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