3人の少女と1人の少年の誰にも知られていないファンタジー物語
シカンタザ(AI使用)
3人の少女と1人の少年の誰にも知られていないファンタジー物語
【一話完結】なんでもいいから毎日投稿を目指すショートショート 第74話「五風十雨」
https://kakuyomu.jp/works/16816927860102765585/episodes/16816927861649952255
を5千字の短編にまとめたものです。
「五日ごとに風が吹き、十日ごとに雨が降るといいんだよね。だって稲作にいい気候じゃん!」
なんてことを言ってたっけなぁ……。
そんなことを考えながら歩いていると、あっという間に目的の店が見えてきた。
『万屋 山吹』
そう書かれた看板を横目に扉を開ける。カランカランとドアベルの音が鳴り響き、その音に反応してカウンターにいた女性が顔を上げる。
「いらっしゃいませー」
鈴の音のような声が店内に響く。ふわっとした栗色の髪は肩までの長さで、前髪を横に流してピン止めしている。そして綺麗な青い瞳をしている。背は160cmほどだろうか? 小柄だがスタイルが良く胸も大きい。歳は20代前半くらいだろう。少し幼さを残した可愛い系の美人さんだ。
「こんにちは! 今日はどんなご用件ですか?」
彼女は俺の顔を見るなり笑顔で尋ねてくる。
「えっと、実はこの子たちに防具を作って欲しいんですけど……」
俺は後ろにいるメイサたち3人を紹介する。
「あら! 3人ともとても可愛らしいですね! わかりました! じゃあ採寸するのでこちらへどうぞ~」
「ありがとうございます。よろしくお願いしますね」
俺たちは彼女の後に続いて奥の部屋へと移動する。
部屋に入ると、そこには簡易的な試着室のようなものがあり、カーテンで仕切られている。中に入ってサイズを測るようだ。
「ではみなさん順番に入ってくださいね!」
彼女はテキパキと準備を進めていく。
「じゃあ最初は私から入りますね~」
そう言いながらメイサが入っていく。
するとすぐに「キャッ」と言う声と共に、「いた~い」と言ってくる。
「大丈夫か!?︎」
俺は慌てて声を掛ける。
「うん、ちょっと擦りむいちゃったみたいだけど大したことないよ~」
メイサの声を聞いてホッとする。しかし、念のため後でポーションでも渡しておくかな。
次はメイサよりも年上に見える少女が入る。
「うぅ……痛いです……」
涙目になりながらもなんとか耐えている様子だ。
「よし、もうすぐ終わるから頑張れ!」
「はいぃ……」
そんな会話を聞きつつ最後に残ったのは、一番小さい女の子だった。まだ5歳くらいだろうか?
「大丈夫だよ〜、みんなで一緒にやろうね〜」
彼女はメイサに声をかけると、先に入ってきた子の手を握りながら一緒に入って行った。しばらくして、2人が出てきたのだが、2人はなぜか少しだけ服が破れていた。
「あれ? 2人の服ってこんなに破けたっけ?」
疑問に思い聞いてみる。
「えぇ、まぁ……。ちょっと色々ありまして……」
なんだか微妙な顔をする彼女達を見てそれ以上聞くことはできなかった。それから少ししてメイサたちの採寸が終わったようなので、俺達は外に出ることにした。
「あの、本当に防具を作ってくれるんですか?」
俺は店を出てすぐ、先ほどの女性に質問をする。
「もちろんですよ! 私は防具作りに関してはプロですから任せてください! それに、あなた達が今持っている武器を見た感じだとかなり強いモンスターを倒してきたんでしょう? それなら素材の質もいいはずだし、きっと良いものができあがりますよ!」
彼女は自信満々といった表情で答えてくれる。
「そういえば自己紹介がまだでしたね。私は山吹 流と言います。これからよろしくお願いしますね!」
「俺はタクミと言います。こっちがリリスとメイサ、それとこの子はミルキーといいます。こちらこそよろしくお願いします」
俺達は順番に名前を伝えて頭を下げる。
「はい! こちらこそよろしくお願いします! それで、お兄さんの職業は何ですか?」
「俺は一応魔法使いをやっています。レベルはまだ7なのでたいしたことありませんけど……」
「え!?︎ そうなんですか! すごいじゃないですか! 魔法使いは珍しいんですよ! あ、ちなみに私のことは気軽に流と呼んで下さい。呼び捨てでいいですよ!」
「わかりました。じゃあ流さんと呼びますね。ところで防具の方なんですけど、とりあえず今の手持ちで足りるものを作ってもらえませんか? 残りはまた今度来た時に払いますので……」
「いえ、お金はいりません! その代わりといってはなんですけど、防具を作る間この子達の相手をしてあげてくれませんか? この子達も寂しいと思うんですけど、なかなか私以外の人が来なくて……」
「えっと、それは全然構わないんですけど、その子たちは一体……」
「あぁ、すみません! この子たちは私の趣味で作った子なんです! この子たちが可愛いからって理由で作っちゃいまして……。だから本当はこの子たちにも防具を作ってあげたかったんですけど、作る時間が無くなってしまいまして……」
趣味で作った子って……? 詮索するのはやめようと思った。
「なるほどそういうことなんですね。わかりました。じゃあこの子たちと遊ばせてもらいますね。ただ、あまり無理だけはさせないでくださいね」
「はい! ありがとうございます!……そうだ! せっかくですからタクミさんにも何か作って差し上げましょうか?」
「えっと、俺には必要ないんで大丈夫ですよ」
「遠慮なさらずに! これも何かの縁ですから!」
「ははは、じゃあお言葉に甘えてお願いします」
俺がそう言うと彼女は嬉しそうに微笑み、店内へと戻っていった。そして数分後、彼女が持ってきたのは黒いローブだった。
「これは『黒魔布』という希少価値の高い生地を使って作ったものです! 魔力を通すと防御力が上がり、魔法耐性が付与される優れものなんですよ!」
「へぇー、凄く良いものを貰ってしまって申し訳ないな……」
「いえいえ、こちらとしてもタクミさんに何かお礼がしたいと思っていたところだったのでちょうど良かったです」
彼女はそう言って笑顔を見せてくれた。
「ありがとうございます。大切に使わせてもらますね」
「はい! ぜひ使ってくださいね!」
こうして俺たちはこの店で防具を作ってもらうことにした。
「はい、じゃあ次はリリスちゃんね」
俺はリリスを連れて試着室に入る。
「じゃあ今から採寸するからじっとしててね」
彼女はメジャーを取り出し、リリスの体に巻きつける。
「んっ……。ふぅ……。これでよしと……。じゃあ今度は立ってみてもらえるかな?」
言われた通りに立ち上がり、採寸された箇所を見る。するとそこには小さな膨らみがあった。
(え? ……これってもしかして……)
俺はその部分を見つめたまま固まってしまう。
「どうしたの? 早く終わらせないと次の子が待ってるよ?」
彼女は不思議そうに俺に話しかけてくる。
「いや、あの、すみません。ちょっとだけ時間をいただけないでしょうか?」
「うん、別にいいけど……。じゃあちょっとだけ休憩しようか。はい、お茶でも飲んで落ち着いてね」
彼女はそう言いながら俺にお茶を渡してくれる。
「ありがとうございます……」
俺はそれを一気に飲み干す。
(やっぱりこの子女の子だ……。しかも結構可愛らしい顔立ちをしている。年齢は俺と同じくらいか少し下くらいか?)
そんなことを考えながら彼女を見ると、目が合った。
「ねぇ君、さっきからずっと僕の胸元を見てたよね? どうして?」
「え? いや、それは……」
まさか気づいていたとは思わなかった。
「もしかして僕に興味があるのかい? うーん、悪いんだけど僕は男の子には興味がないんだ。ごめんね」
「そ、そうなのか。それは残念だよ。前から聞きたかったんだけど性別はどっちなんだ? 男の娘とかいうやつ?」
「え? 何それ? よくわからないけど、多分違うと思うよ。一応女だけどね」
「そうなのか……。まぁそれならそれで良いよ。ところで君はいくつなんだ?」
「15歳。タクミは?」
「俺も同じだ。なんだ、同い年じゃないか。敬語なんていらないよ。普通に接してくれ」
「わかったよ。それで、タクミはどんなプレイが好きなんだい?」
「ぷ、プレイ!?︎ な、何を言っているんだよ! そういうのは良くないぞ!」
突然変なことを聞かれたので動揺してしまう。
「はは、冗談だってば。それより、まだ時間がかかりそうなの? 早くしないと他の子の番が終わっちゃうよ?」
「あ、あぁ、もうすぐ終わるはずだ。もう少し待ってくれ」
それからすぐにメイサ達の採寸も終わり、防具作りに取りかかることになった。
「じゃあさっそく始めるけど、まず素材選びから始めようか。何かリクエストはあるかな?」
「えっと、じゃあメイサは軽鎧で、リリスはその逆でお願いできますか? それと、できれば動きやすいものが欲しいです」
「かしこまりました! では早速取り掛かります!」
彼女は俺の要望を聞いてくれ、嬉しそうに作業を始めてくれた。
「タクミさん、私はどんな感じにすれば良いですか?」
ミルキーが聞いてきた。
「そうだな……。じゃあメイサと同じように軽いものにしてもらって、後は防御重視でお願いします」
「わかりました! じゃあ早速作っちゃいますね!」
「はい、よろしくお願いします」
こうして防具屋での作業は順調に進み、一時間程で完成してしまった。
「はい! 出来上がりました! どうでしょう? お二人共着心地などいかがですか?」
彼女が作ったものは黒いハーフプレートアーマーだった。
全体的に薄く作られており、可動域も広いようだ。
「ありがとうございます。凄く良いですね。軽くて動きやすそうです」
「私も良いと思います! とっても気に入りました!」
俺達は出来上がった装備を身に着ける。するとメイサは一瞬驚いた表情を見せた後、笑顔になった。
「うん! 思った通り良く似合ってますね!」
「ありがとう。本当に助かったよ」
俺は改めて彼女にお礼を言う。
「いえいえ、こちらこそ貴重な体験が出来て楽しかったですよ。またいつでも来てくださいね」
「あぁ、もちろんだ。じゃあ俺たちはこれで失礼するよ」
「ありがとうございました!」
流に見送られて店を出ると、怒りをあらわにした少年がいた。彼は俺の顔を見ると
「お前のせいで姉ちゃんが大変なんだ! 早く助けろ!」
と言ってきた。
「どう言うことだ?」
「どうもこうもない! 早く行かないと手遅れになるぞ!」
そう言って走り去って行った。
「どうしたんでしょうかね?」
ミルキーが怪訝な顔で言った。
「さぁ? でも、急いでいるみたいだし行ってみましょうか」
俺達はすぐに少年の後を追った。
「はぁ……はぁ……。ここだ……」
少年は建物の前で息を整えている。そして中に入っていった。
(この建物にお姉ちゃんがいるのか?)
「みんな、準備はいいか?」
俺は小声で話しかける。
「はい、大丈夫です」
「問題ないよ」
「私もOKだよ」
三人が返事をした。
「よし、じゃあ行くぞ」
俺は扉に手をかける。緊張しながらゆっくりと開くと中には数人の男が倒れていた。
(これは一体……。何があったんだ?)
警戒しつつ部屋に入ると、奥の方で女性が縛られていた。
「誰!?︎ 誰かそこに居るの?」
女性は怯えた様子で俺達に問いかけてくる。
「えぇ、ここに居ますよ。安心してください」
「これは罠です! あなた方はあの少年に騙されたんです!」
「どういうことだ……?」
気が付くと少年と多数の男たちに囲まれていた。
「ふふ……命が惜しければ持っているものと着ているもの全部よこしな」
少年が不敵な笑みを浮かべている。
「誰がそんなこと聞くかよ!」
俺たちは戦った。
「ぐあっ……」
「うぅ……」
「ちくしょー!」
次々と仲間達がやられていく。
「ははは! これで残りはお前だけだな!」
「く……」
「諦めて武器を捨てたらどうだ? そしたら殺さないでおいてやるぜ?」
「断る!」
「そうかい。じゃあ死ね!」
少年が剣を振り下ろす。
「危ない!」
その時、目の前にいたリリスが身を挺して庇ってくれた。
「リリス!?︎ どうしてこんなことを!」
「タクミ、私はもうダメ。最後に一つだけ言わせて」
「なんだ?」
「愛しています」
そう言い残し、リリスは事切れてしまった。
「なんでだ! なぜこんなことに……」
俺は膝から崩れ落ちる。
「タクミさん……。すみません……。私がもっとしっかりしていれば……」
ミルキーが涙を流しながら謝罪してきた。
「気にしないでください。それよりも今はこいつらを倒すことを考えましょう」
「はい……。わかりました」
俺たちは立ち上がると、少年たちと対峙した。
「まだやる気か? 無駄だってわかんねぇのかよ」
「いや、そうでもないさ」
「はっ!強がりもいい加減にしとけってんだよ!」
少年が再び斬りかかってくる。それを受け止めると、力一杯押し返した。
「嘘だろ!?︎ なんて馬鹿力が……」
少年が驚きの声を上げる。
「くらえ!」
俺は拳を繰り出したが、避けられてしまう。
(やはり素早いな)
「今度は俺の番だ! 覚悟しろ!」
そう言うと、少年は目にも止まらぬ速さで連撃を放ってきた。
「速い! くっ……」
連撃をもろに食らい、俺は倒れた。
――GAME OVER――
俺たちの旅はここで終わった。
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