こんにちは、さようなら

月代零

第1話

 時代も、次元も超えて、わたしたちは何度も生まれ変わり、出会う。それがわたしたちの運命。


 最初の人生で、彼は死の間際、自分とわたしに魔法をかけた。同じ魂を違う肉体に生まれ変わらせ、幾度も巡り合う魔法を。

 それは、呪いとも言えたかもしれない。この人生が終わっても、また別の場所で生まれて、違う人生が待っている。初めはわからなくても、お互いのことを必ず思い出す。永遠に安らぐことのない、終わりのない魂の旅。

「もしも叶うのなら、お前とは違う形で出会いたかった」

「……そうかもしれないわね」

 その日は、雨が降っていた。ぬかるんだ地面に倒れた身体はもう動かない。命が、身体から流れ出ていく。痛みさえ、もう感じない。

「何度出会っても、わたしは必ずあなたを――」


 それから、もう何度目になるかもわからないくらい転生を繰り返した。様々な時間を、世界を渡り歩いた。けれど、わたしたちはは必ずお互いのことを思い出し、探し求める。

 雑踏の中、わたしは軽快に歩を進める。心が浮き立つ。もうすぐ、彼に出会える。何度生まれ変わっても必ずわかる、確かな予感。

「……見つけた」

 彼は、類稀なる僥倖に巡り合ったかのような、恍惚とした笑みを浮かべる。たぶん、わたしも同じような表情をしている。

「会いたかった」

 そして、わたしは光の刃を右手に顕現させ、彼に肉薄する。

「さようなら、魔王」

 わたしたちは、勇者と魔王。何度も生まれ変わっては出会い、殺し合う。狂おしいほどに、死の舞踊を舞い踊る。

 それが運命。

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