第60話 エピローグ


「巨人は!?」


エド様は巨人の方を見ると巨人はしたシロからボコボコにされていた。


(シロが4メートルくらいある……。 あれ? 犬って巨大化できたっけな?)


巨人は一方的にやられいてる。

爪でえぐられ、噛みついては振り回され地面に叩きつけられている。

巨人はちょっと涙目になっているように見える。


(あれは……、たまに狩りで遊んでいるときにやるやつだ!)


シロは極たまーに狩りで遊ぶ。

相手をいたぶるように攻撃する時があるのだ。

何時でもとどめをさせるのにそれをしない。

遊んでいるようで、実は狩りの練習をしているらしい。大事な行為なので人間の基準で邪魔をしてはダメなやつという話。

シロも巨大化とかいろいろ初めて使った技能を試しているのかもしれない。


巨人は頭をシロにガジガジ齧られていたらついに動かなくなった。


(なんか哀れ……。)


「我々の勝利だ! 勝ち鬨を上げよ!」


おおおおぉぉぉぉ!!


巨人の死亡を確認し、エド様が勝利宣言をした。

戦争は終わった。戦場に皆の喜びの声が響く。


戦後処理として敵の陣地を捜索したところ、囚われ拷問されたロブの遺体があったそうだ。

おそらく魔族に情報を流したのはロブだろうとのこと。

逆らえないよう隷属の首輪なる魔道具がつけられていたようだ。


(なんとも複雑な気持ちだな……。)


ざまぁ見ろ!とも思ってしまうし、哀れにも思ってしまう。

エド様をピンチに追いやったのは許せないけど。


私は陣地に残り、戦後処理を手伝っている。

ダン様からさらにいくつか回復魔法を教わり、けがを負った人々を治癒して回っている。

私の護衛として何人かの騎士様がついている。

シロもいるし戦争も終わったので危ないことはないと思うのだけど、聖女が護衛なしでウロウロするのは問題があるらしい。


そもそも聖女ってなんなのかと聞くと、この国を最初に起こした初代国王様と同じ存在らしい。

神聖属性にとても優れた才能を持ち、聖獣をてなづける者。

それ故に魔族相手にはとても強いのだとか。

初代国王様は聖獣と共に魔族と戦い、お姫様と結婚して国を起こした。


(私は最後の方でちょろっと戦っただけなんだけど、そんな凄い人と同列視されて良いのだろうか?)


魔族と戦える貴重な存在だから護衛の騎士様がつく……?

そもそも聖女というのが何かの間違いでは? と聞いてみても戦場で起こったあれこれが証拠となって間違いないそうだ。


(う~ん、つまりシロと一緒に魔族と戦えってことかな?)


数日を陣地で過ごしていると豪華な馬車が迎えに来た。

これから王都に行く必要があるそうな。


(いろいろバレちゃったからなぁ。)


加護の件はバレていないけど、魔法が使えることがバレてしまった。

私は聖女らしいし、シロも聖獣らしいし……。


(加護はバレなかったし、飼い殺しみたいなことにはならないよね?)


魔族と戦うために常に戦場とか? そんな感じかな?

エド様はすぐに追いかけてくれるそうだが、戦後処理があり、まだ動けないようだ。

ハンネさんあてに私の無事を伝えるよう頼むと快く引き受けてくれた。


馬車に揺れること2週間。

旅路は順調そのもの。

途中で宿泊する場所はどこもその町で一番の高級な宿ばかり。

騎士様に合わせて宿を選んでいるのかと思ったら私がメインらしい。

それにしても私なんか相手に皆さんとても恭しく接してくれる。

なんと私専属のメイドさんがいる。しかも3人!

聞けばデリグラッセのご領主様が用意してくださったそうな。


メイドさん達は凄くやる気に満ち溢れていて、衣服にしてもやたらと豪華なものばかり用意されているし、髪を整え、メイクもしてくれる。

お風呂でも全身ピッカピカに磨き上げてくれる。


「デリグラッセから聖女様が誕生するなんて……。お世話させていただくのは大変名誉なことなんですよ。」


メイドさんたちは口々にそんなことを言うが私はただの村娘なんですよ……。

ただシロは毎日丁寧にブラッシングされてご満悦だ。


そして王都へついた。

初めて来たけど、デリグラッセよりもさらに大きい。

その中心に大きく立派な城がある。そこまで広く真っすぐな石畳で整備された道が続いている。


王城に着き、ここでも下にも置かない扱いを受け、非常に居心地が悪い。

毎日、豪華な服を着て、豪華なご飯を食べ、豪華な部屋で寝る。

ありがたいのだけど、一人で着れない服、食べ方の分からないご飯、いくらするか分からない調度品に囲まれているのは心臓に悪い。


(普通の服着て、普通のご飯を食べて、普通に寝たい……)


このコルセットとドレスの組み合わせでただでさえ大きな胸が凄いことになっている。

あと胸元がかなり大きくあいている。

最初は恥ずかしかったけど、もう全部のドレスがそうなっているので最近は慣れた。

そんな贅沢な悩みを抱えていたらハンネさんがやってきた。


「エステル、無事だったか。」


「はい! ハンネさんこそ。」


私たちはお互いの無事を喜びあった。


「見違えたな。本当にお姫様みたいだよ。」


ハンネさんは私の恰好をしげしげと見て言う。


「綺麗な服を着て、メイドさんに化粧してもらえば誰でもこうなると思いますよ?」


毎日、化粧される過程を見ているけど、本当に魔法みたいに顔が変わっていく。


「それでハンネさんはどうしてここに?」


「エド様が手配してくれた。エステルが一人で心細かろう、とな。私はエステルの教育係みたいなものになるらしい。」


「それは嬉しいです! これからも一緒にいられるんですね! って教育係? 私は何の勉強するんですか?」


「それがさっぱり決まっていない。」


「え?」


何を教えるか決まってないのにハンネさんは引き受けちゃったの?


「聖獣を従えた聖女が現れるなんて全く想定してなかったようだな。上も下も大騒ぎみたいだぞ。」


「大騒ぎですか……?」


「エステルの身分一つ取っても誰より偉いのかが決まらんらしい。初代国王様と同列と言う人もいれば、名誉市民と平民を推す声もあるそうだ。だから戦争での功労者なのに謁見もまだだろう?」


初代国王様から平民って幅広いな。


「謁見?」


「あれだけの戦果を上げたんだ。功労者に対する表彰があるべきなんだがエステルの身分が決まらないから式典も出来ないらしい。」


「身分って、私、貴族様になるんですか!?」


貴族様に良いようにされてしまう未来は予想していたが、自身がそうなるのは全くの想定外だ。


「そんな恰好させられておいて何言っているんだ?」


「いや、これは汚い身なりで王城にいたらいけないのかな?って思ってました。」


「そうだったらドレスなんて着せられないだろう? ……エステル、ちょっと抜けてるな。」


「酷い!!」


ハンネさんが顎に手をあて、ちょっと考えるような仕草する。


「身分……そうだな、エステルはエド様が好きか?」


「え? はい。」


身分の話から突然話が飛んだので思わず正直に答えてしまった。


「結婚したい?」


どうしたんですか? ハンネさん。


「そりゃそうなれたらいいなぁとは思いますけどね。エド様のお気持ちもあるでしょうし、それこそ身分もあるでしょう。それにエド様には婚約者とかいらっしゃるんじゃないですかね?」


エド様の事はお慕いしているけど、結婚なんて全然イメージ出来ない。

お姫様になりたいか?と聞かれたらなりたいと答えるのと同じ感じで答えてしまった。


「婚約者……うん、わかった。ちょっと急用が出来た。」


そう言うとどこかへ出かけて行ってしまった。


その日の晩……。

何時もいろいろ世話をしてくれるメイドさんの一人から飛んでも無いことを言われた。


「王太子殿下とのご婚約が決まったそうで、おめでとうございます」


「え?」


ハンネさんと昼間にエド様との結婚について話していたら夜には王太子殿下の婚約って話になっていた。


(もう何が何やら……。誰かに説明してほしい!)


翌日、エド様がやってきた。


「やぁ、エステルさん……そのとてもお美しくなられましたね。」


今日は白地に金糸が入ったとても立派な恰好をしている。

何時ものさわやかな笑顔で私に微笑みかけながら私をほめてくれた。


「ありがとうございます。エド様……。」


褒められたのは嬉しいのだけど婚約のことが頭をよぎるとどうしても気持ちが沈んでしまう。


「エステルさん、浮かない顔ですね。どうかしましたか?」


「私、王太子殿下と婚約するみたいなんです。」


「……? はい。そうですね。」


「その……突然、そんなことが決まったので……。」


「あぁ、戸惑っているのですね。ムリもありません。聖女、聖獣の誕生で皆、その……凄くはしゃいでまして。エステルさんとシロ様に早く会いたいのに身分が決まらないとどう接したら良いか分からない。そんな事情もあって急な決定になってしまったみたいですね。申し訳ありません。」


「いえ、エド様に謝っていただくことでは……」


「国王陛下のはしゃぎっぷりが凄いのですよ。あんな興奮された顔を見たのは僕も初めてです。すぐにでも婚約式を上げようと準備に取り掛かったとかようで――。」


ここまで流されてきてしまったけど、このままでいいのだろうか?

会ったことのない王太子殿下と正式に婚約が決まってしまえば取り返しがつかないのは何となくわかる。


「エド様、その王太子殿下との婚約はもう決定なのでしょうか?」


「……まだ決定ではないかと。エステルさん、どなたか望む相手がいらっしゃるのですか?」


エド様はにこやかな笑顔から真剣な表情に変わった。


(ここで伝えなくちゃ! これが最後のチャンスかもしれない。ここで何も言わなかったら正式に王太子殿下との婚約が決まっちゃう!)


私は大きく深呼吸をしてエド様の目をはっきりと見つめた。


「私、エド様が好きです!」


「……え? はい。僕もエステルさんが好きです。」


エド様は凄く驚いた顔をされた後、顔を真っ赤にしてそう言ってくれた。


「えっと、ですので王太子殿下との婚約は……。」


「うん? あぁ!!! エステルさん!」


「は、はい!」


エド様はその場で片膝をつき、恭しく私の手を取った。


「僕の名前はエドワード・ロイク・バティスト・ベルレアン この国の王太子です。」


そう言って私の手の甲に優しくキスをした。


「えええ!!!?」


その時に上げた私の絶叫は城中に響き渡ったと言う。


この後、エド様と婚約式を上げた。

短い間に様々な儀礼を詰め込んだので頭がパンクしそうだ。

さらにそこへ国王陛下との謁見、それの儀礼……もう勘弁してほしい。

その目まぐるしさ故か婚約式の内容をほとんど覚えていない。

観客として見ていたハンネさん曰くちゃんと出来ていたらしい。


この後、魔法学園に通ったり、王太子妃教育や社交、外交とかでいろいろあったけど、エド様やハンネさん、シロ、皆の支えもあって私、エステルは幸せに暮らせています。




<あとがき>


最後までお読みくださりましてありがとうございます。

日曜の昼に掲載するとかぬかしておいて今日まで引っ張ってしまいました。

大変申し訳ございません。


エピローグの初期構想でじゃ1500文字程度だったんですけどね。

気が付いたら4000文字以上になってました。


最後の最後で話がつながってないところを見つけてしまい大幅修正していたら時間を食ってしまいました。


さて、全く構想も何もありませんが何か思いついたら魔法学園編も書いてみたいと思います。

そのあとは王太子妃編ですかね。まったーくネタないですけど!



―ボツネタ―


巨人vsエステル


思いっきり魔力を込めた”聖弾”を発射!

一撃で巨人を粉砕!


シロvs魔族

シロが速攻で首を刈り取り終了


まったく盛り上がらない・・・・ラストバトルなのに!

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とある聖女の受難   (旧題:おっぱい聖女!) さっちゃー @sattya

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