異世界サバイバルゲーム~異世界獣との別れと出会い~
DITinoue(上楽竜文)
グリフォンとの別れの悔やみ
私は今、異世界サバイバルゲームをやっている。ゲームの名前は『異世界サバゲーon-line』
このゲームは、異世界が舞台だ。一見、地球と特に変わったところも無いように見える「獣の奏」という大地から物語はスタートする。自分のパートナーとなる『異世界獣』がその人の好みによって選ばれる。そのパートナーと共に、この地で起こる様々な困難に立ち向かい、サバイバル生活をしていくという物語だ。別の参加者と出会うと協力することもできる。資源などをめぐる争いが参加者同士で起こることもある。
私の相棒はグリフォンだ。かわいくて、なおかつカッコよくて、とても使えて、相性が良いという様々な条件を付けた結果、検索で出てきたのは3匹。その3匹は、ユニコーン、ドラゴン、グリフォン。その中で選んだのがグリフォンだ。
グリフォンの名前は「クリリン」グリフォンっぽくてかわいい名前を考えたところ、すぐに出てきたのがこれだ。私は1発でそういうものを決めてしまうタイプだから、直でこれにした。
ゲームの中での私、サクはクリリンの背中に乗って大地を悠々と舞っている。肉類が少なくなってきたので、川に向かっているのだ。川について、着地すると私は薄着になり、モリで魚を捕り始める。だが、なかなか捕れない。この経験は何度もしているが、一向に上達できないのだ。これは多くの参加者が感じること。でも、私の相棒は大丈夫。捕れないとれないと、うめいている私の横で、クリリンは20匹ほど捕っていた。
「クリリン、さすがね。これなら、当分食料の心配なしなくて良さそう。はい、ご褒美」
と言って、備蓄の馬肉を与えた。
「カーカカーアアー(ありがとう!美味しい!!)」
クリリンは嬉しそうな声を上げた。
「よし、次行こう」
私たちは、拠点に戻ろうとした。
その時に、奴は来た。
バサバサバサバサバサバサバサバサ
大きな羽音。ハァーという火を噴く音。赤い体と鱗に覆われたからだ。これは・・・・・
「ドラゴンじゃないの!!!!」
しかも、正真正銘これは、私がクリリンを選んだ時に出てきた3候補のうちの一つ。今は別の参加者が取ったらしい。
「お前は、グリフォンか。こいつな、鶏肉も好きらしいんだ」
ドラゴンの持ち主が話しかけてきた。
「ああ、そうですか。食えるものなら食ってみなさいよ」
サクは戦闘モードになった。
バサバサバサバサ
クリリンと私は飛び立った。そして、素早い動きでやつの羽を少し破った。
「早速痛い攻撃を仕掛けてきやがったな。だが、それぐらいでは効かない」
なんと、そのまま飛び立った。どうやら、傷のダメージを抑える拡張機能を使用しているらしい。
「まだまだ行くよ!!」
そう言って、もっと羽を破ってやろうと思ってクリリンと突進すると・・・・・
ボボボボボボボボボ
火炎を放射した!!
「カカカーアアアーーカカカーーアアー(痛いよ、苦しい)」
クリリンは苦しそうな声を上げる。
「もういっちょ!」
素早い動きで腹に回ると、腹に一蹴り食らわせた。
「グァァァァァァ!!!!!!!!」
少しは相手を傷つけることができたっぽい。だが、奴を怒らせてしまった。
「お前、俺のかわいいゴンをよくも!!」
ドラゴンとパートナーはぶちギレしたらしく、思いっきりしっぽを振った。それがクリリンの腹に直撃した。
「アアアーーー!!!!カカカーーー!!!!(いてぇ!!!!)」
クリリンは暴れた。私は落下してしまった。
「グアァァ!!!!グルルルグアァァァァ!!!!!」
次は、思い頭突きをクリリンの顔面に食らわせた。クリリンの頭からは血が出ている。大量出血だ。このままでは死んでしまう。
「ガガァァァァァグルルグアァァァァ!!!!!!!!」
最後に、大量の火炎を噴射して、クリリンを仕留めた。クリリンは羽毛が焼けてしまっている。そのまま、サクの頭上に落ちてきた。
しばらくして、サクは目が覚めた。重い。どうやら、クリリンの下敷きになっているらしい。しかも、服が全部焼けてしまっている。どうにかクリリンから抜け出すと、やっと現状を把握した。クリリンは――目をつぶっていた。腹にはドラゴンが噛んだ跡があり、もうダメかも知れない。大きな心臓を見ても、本当に少し、感じるか感じないかぐらいしか動いていない。
「えいや!!」
サクは急遽購入した拡張機能を使った。死にかけの異世界獣と最後の会話ができる機能だ。
「カカーアアーカーカー(無事でよかった)」
「あ・・・・・何であなたは私を振り落としたの!!」
安否を確かめるつもりが、ついつい怒ってしまう。でも、これも私の心配のうちだ。
「アアー・・・・・(それは・・・・・)」
クリリンが故意でやったのではないことは分かっている。でも、一言言ってしまうと止まらなかった。
「しかも、私の体見て。今、もう裸状態よ」
「アー・・・・・(・・・・・・・)」
クリリンの顔が赤くなっている。
「何恥ずかしがっているのよ!!その前に、これどうにかして!!」
「アア・・・・・・・・・・・(え・・・・・・・・)」
「無理ならいいよ」
今更ながら、優しい口調で言った。本人は怒っているっぽい。でも、それを表す気力が残っていない。
「カカカカーアアーカアカアカアー(私はもういいよ)」
見捨ててほしいと言っているのだろうか?
「そんなのダメでしょ!!何考えてんの?!」
そう言いながら、本人の願いだと思って、毒草を口に入れる。
「カーカーアーアーカー(今までありがとう・・・・・さようなら・・・・・)」
クリリンは息絶えた。
私は、一人で歩いて拠点に戻った。深い悲しみがあった。どうしてあんなこと言ったのだろう、どうして毒草で殺そうと思ったのだろう。どちらにしろ、最後なのだからせめて苦しまずに死ぬ方が良かったと思う。なのに・・・・・。
「私って、バカだ」
さらに、異世界獣を持たないものはポイントが圧倒的に下がり、戦いになった時はおよそ5分でゲームオーバーになってしまう。このままだと、ゲームオーバーは時間の問題だ。
その日が来た。またまた、前のドラゴンに目を付けられたのだ。
「お前、まだ生きてたのか。でも相棒はどうした。消えたようだな」
ケケケケとウザい笑い声が響く。
「んじゃ、やっちまうぜ!!」
そう言って、ドラゴンが飛びかかってきた。拠点をとにかく逃げる。狭いところには入れないが、炎で全部燃やそうとしている。
私は、もうダメというところまで追い詰められた。
「最期に一言あるか??」
「・・・・・・・」
何も言わないから、ドラゴンが飛びかかってきた。
「死ねー!!!!!」
と、その時にドラゴンが倒れた。目を開くと、そこにいたのは真っ白の馬だった。それも角が生えている白馬だ。
「ユニコーン・・・・・」
これも、3候補のうちの1匹だった。ドラゴンの遺体を引きずって、奴が帰っていくと、私は彼に話しかけた。
「助けてくれてありがとう」
あまりの唐突な出来事に、目をパチパチさせている。気づけば、ユニコーンの角の力で傷も治ったようだ。
「あなた・・・・・話聞いてくれる?」
「コーンコーン(いいですよ)」
ユニコーンが鳴いた。それから、私はこれまでの出来事をすべて話した。話し終わると、彼はこういった。
「コーンコーンコーン(私のパートナーになってくれませんか)」
そう言われた。クリリンの後悔はまだ残っている。しかも、クリリンの代わりのように使うのはいけないのではないかと悩んだ。すると
アーカーンアーカー(彼の仲間になってあげて。私からのお願い。あなたが私のことをいつまでも悲しんでそのまま1人でいる方が私は嫌。だから・・・・・
クリリンの声がした気がした。小学生の道徳のような内容だったが、私はその通りだと思った。
「相棒になってください」
「ココーン!!コーンコーンコーンコーンコーン!!!!(喜んで!一緒に頑張りましょう!!)」
彼は大きく舞い上がった。ユニコーンはグリフォンほど使える相手ではないが、それでも私はある思いから彼を選んだ。彼の名前を考えるときに、真っ先に思い浮かんだのがこれだ
「グッドルック(幸運)」
そして、
「フレンドシップ(友情)」
だった――
異世界サバイバルゲーム~異世界獣との別れと出会い~ DITinoue(上楽竜文) @ditinoue555
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