第31話 初めてのレベル上げ⑨

 というわけで、俺は今わかっている鑑定スキルでできることを書き出してみた。

 まずは魔獣鑑定、そして視界にないものを鑑定して場所を探ることができる。

 次にわかったことは魔獣の倒し方とレベルアップの方法が鑑定できることだ。

 ……あれ? こうして書き出してみると、二人が言っていることもわかった気がする。相当に規格外な能力だな、これは。

「試しに僕たちのことを鑑定してみる?」

「人物鑑定ができるかどうかですね? いいですよ、トウリさん」

「え? でも、いいのかな?」

「私たちがいいと言っているんです、大丈夫ですよ」

 本当に、二人には足を向けて寝られなくなりそうだな。

「ありがとう、二人とも。それじゃあ——鑑定、グウェイン・ヤマト」

 俺は最初にグウェインの人物鑑定を行うことにした。

 すると、なかなか詳細に情報を鑑定することができた。

 名前、年齢、性別、職業、身長、体重。……グウェインって、一九歳だったのか。

 レベル25、筋力240、耐久力200、速さ250、魔力100、器用170、運20 。

 スキルも表示されており、剣術スキル5/10、快速スキル3/10、剣気スキル/10。

 ……えっ? 運の能力値以外、三桁なんですけど? 俺の能力値って……めっちゃ低くないか?

 少し残念に思いつつ、俺はこれらの情報がわかったと伝えると、二人とも口を開けたまま固まってしまった。

「……ここまで詳細にわかるものなんだね」

「……私も驚きました」

「え? でも、アリーシャも鑑定士だよな?」

「人物鑑定はスキルレベルが最低でも6以上必要なので私はできません。それに、レベル差がありすぎると鑑定できないんです」

「レベル2のトウリがレベル25の僕を鑑定できるのは、まず異常だよね」

 いや、異常とか言われてもなぁ。できてしまったものは仕方がないだろう。

 しかし、この流れだと俺はアリーシャのことも鑑定しないといけなくなるんだろうが……女性としては知られたくない情報まで知ってしまうかもしれない。

「それじゃあトウリさん。私のことも鑑定してくれませんか?」

「えっと、それは問題ないんだけど……いいのか?」

「構いませんけど、何か問題がありますか?」

 気づいていないのか、そうなのか。……あとから怒られるのも嫌だし、一応聞いてみるか。

「その、グウェインの鑑定でわかっていると思うけど……体重も出ちゃうけど、いいのか?」

「——!?」

「大丈夫だって、トウリ! 姉さんは体重なんて気にしていな——ぐはっ!?」

 ……お、おぉぅ。グウェインのみぞおちにアリーシャのこぶしがめり込んでいる。

 耐久力200でも悶絶もんぜつしているんだから、俺がらったら一撃でアウトだな。

「……や、めておこうか、アリーシャ?」

「だ、大丈夫ですよ! トウリさんに知られるだけなら、問題ありませんから!」

「……だったら、僕を殴る必要は、なかったのでは?」

「グウェインは余計なことを言うからよ!」

 うん、あれは確かに余計だったな。勝負下着を鑑定させるあたり、こいつは狙ってやっている節もあるからかばい切れないけど。

「そ、それじゃあ、鑑定するよ?」

「お願いします!」

 ……体重だけは口にしないでおこう。

「鑑定、アリーシャ・ヤマト」

 俺がアリーシャを鑑定するためにそう口にした——直後だった。

「あ、あれ?」

「トウリさん!」

「トウリ!」

 俺は全身から力が抜けていく感覚に襲われ、次の瞬間には意識を失ってしまっていた。

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【書籍試し読み版】職業は鑑定士ですが【神眼】ってなんですか? ~世界最高の初級職で自由にいきたい~ 1/渡 琉兎 MFブックス @mfbooks

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