後書き
~後書きのようなもの~
この作品は、初稿の段階である程度まとまりのある自信作だったため長らく放置していたのですが、他作品のリメイクが順調に済んだこともあって、ようやく今回重い腰をあげるに至りました。
そう──2018年に書き上げた時は自信作だった──はずなんですが……今になって見返すとまあ粗がでてくるでてくる (爆笑)
酷すぎる地の文は九分九厘改稿が入り、物語の根幹部分にも大幅なテコ入れを行った結果、48000文字の中編から一気に11万文字を越える長編に生まれ変わりました。
リメイクによって、設定として追加したのは次の三点。
(1)相貌失認という病の設定。
(2)主人公の母親と、妹の存在。
(3)主人公と水瀬の関係性。
最後まで読んで頂けた方なら分かると思うのですが、物語の根幹に存在している謎の全てですね。こうして並べてみると、リメイク前が如何に内容薄い物語だったか、という事実が浮き彫りになります苦笑。
本作で描きたかったテーマを言葉にするなら、それは『血縁による断絶』でしょうね。
今までも『冴えない俺と、ミライから来たあの娘』で似たテーマを描きましたが、本作は同じ時代に生きる兄妹を主人公にしてるぶん、より一層残酷な結末といえなくもありません。
二人の血縁関係については最後までボヤかしましたが、否定する材料は殆どありません。つまり、そういうことです。
それでも翔は、真実を知るという選択肢を捨て、やがてそのことを誰かに咎められることを覚悟しつつも、水瀬を伴侶として選びました。
根本に横たわる重いテーマも相まって、結末は凄く悩みました。
完全に二人が別れてしまうバッドエンドから、なにかイレギュラーな発見により疑念が否定されるハッピーエンドまで、様々模索しました。
そうして決まった結末。彼が最後に行った選択は、正しく言えば許されない。
立ちはだかるのは、絶対の法の壁です。
水瀬が真実を知った時、いったいどんなリアクションをするのでしょうか──。
もしかするとこの先、真実が二人を引き裂くかもしれません。周囲が敵にまわるかもしれません。それでもきっと、二人は立ち向かっていけると私は思います。大丈夫だと、信じています。
みなさんは彼の選択を、許すことができたでしょうか?
2020年七月二十一日 華音 (かのん)
その花は、夜にこそ咲き、強く香る。 木立 花音@書籍発売中 @kanonkodathi
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