焼き鳥

高岩 沙由

塩とタレ

 3連休初日の土曜日。

 天気も良くて、絶好のお出かけ日和で、気になっている浮世絵の展示会が都心の美術館で開催されているけど、なんだか動くのが面倒になって、朝起きてからベッドの上でSNSをチェックしたり、小説を読んでいる間に、夕方になってしまった。


「いや、だらけすぎだろ、自分」

 とだらだらしすぎる自分に突っ込みを入れながら、軽くシャワーを浴びてすっきりとしたところで、お腹が本格的にすいてきた。

 

 何か作るか、と思って冷蔵庫をのぞくと、悲しいかな、何もなかった。

「どんだけずぼらなん、自分」

 とまたまた自分に突っ込みを入れると、買い物に行くために洋服に着替え、面倒だけどコンタクトも入れる。


「気持ちいい天気だね~」

 夕方、17時を過ぎていたけど空は明るく、風は焼き鳥の香ばしい匂いを運んでいる。

「焼き鳥……」

 そういえば、埼玉の東松山には、焼き鳥という名のやきとんがあるんだよな。

 テレビの特集を見て、からしみそをつけて、ビールと一緒に食べたいな、と思っているが、ずぼらな性格だし、行くのが面倒、って思うから、よっぽどじゃなきゃ行かないだろう。

 そんなことを考えながら歩いていると、どんどん焼き鳥の気分になってくる。

「焼き鳥食べたいな」

 そう呟いて、焼き鳥を買う場所を考える。

 コンビニでも焼き鳥は売っているけど、種類が少ないし、温めてもいまいちだしな……。

「近くに持ち帰りできる焼き鳥屋さんなかったっけ?」

 頭の中でこの付近のお店を考える。

 と、その時。

 スーパーの駐車場に焼き鳥の屋台が出ているのが見えた。

「ラッキー♪」

 匂いにつられるようにふらふらと屋台に近づく。


「っいらっしゃい!」

 おっちゃんが威勢のいい掛け声で呼び込みしている。

 鳥を焼く香ばしい匂いを胸いっぱいに吸い込みながら店頭のショーケースを見て、何を食べるか考える。

「注文いいですか?」

「あいよ! なにする?」

 私はショーケースに目を向けたまま注文を始める。

「え、と、ハツとぼんじり、砂肝、せせり、もも、なんこつ、かわ、レバーをそれぞれ2本ずつ。レバーはタレで、他は塩でお願いできますか?」

「あいよ! 大丈夫だよ! 今から焼くから10分後にきてくれ!」

 私は名前を告げるとそのままスーパーに入り、買い物かごを手に酒コーナーに迷わず進む。

 棚一面にある酒を前にして悩み始める。

「シャルドネの白ワインもいいね。あっ、この缶チューハイ新発売なんだ。これも買っていこう」

 適当に目についた酒を買い物かごに入れると、総菜コーナーに足を向ける。

 明日の朝に食べる総菜を適当に選ぶと会計に並ぶ。


 買い物が終わって焼き鳥の屋台に向かうと、ちょうど出来上がっていてすぐに受け取れた。

「毎度あり!」

 店主に見送られ、私は焼き鳥を胸に抱え足早に家に戻った。

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焼き鳥 高岩 沙由 @umitonya

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