焼き鳥の定義を外れるの?~番外編「巨乳バニーガールと最強空手ギャルが弱虫オタクと同棲中」

神無月ナナメ

焼き鳥っていろんな種類があるんだよね

「今度のお題……焼き鳥なんだ。ミナミちゃんにお願いかな?」

 モニタ画面を見つめていた佳二。唐突すぎるつぶやきだった。


 元来フィッシュオン。ただのカフェバー。調理場は最奥部だ。

 三十路オナベさんで料理人亮くん。カナメ先輩との交際疑惑。噂の二人はオトナの関係だろう。関係者も知らない振りだけど。


「僕の基礎はフレンチでね。ミナミちゃんが適任かもしれない」

 多国籍料理。創作する亮くん。不可能でもないだろうけどね。


「ケージくん焼き鳥たべたい? 鶏肉に串を刺して焼くだけよ」

 あっけらかんとしたコック服の美少女だ。迷いなく即答する。


「そだね。昼間だから酒……抜き。かんたんなら食べたいよね」



「ふーん。鶏モモをカタクリコまぶし。おネギ。調味料のタレ。ちょっとだけ待ってくれたらすぐ作れるよ」満面の笑みだった。


「いつもはミナミの名店? あぁ難波周辺ミナミって呼ぶんだ。本格じゃない手作り品か。焼き鳥は食べてみたいかもしんない」

 言いだしっぺの責任。酒なし。ツラい佳二だ。


「ミナミの名店……食べてみたいよね。ちょっとだけ仕込み……串がないよね。かんたんにフライパン焼き。すぐできるかな?」

「へぇ。串なしフライパン……機会あれば。ミナミにも行こう」


 焼き鳥の長串。当然カフェに常備しない。首を傾げるミナミ。かんたんな調理法の提案だ。感心しながら佳二も即応している。



「ケーちゃん!? あーしら抜き。ミナミちゃんとデートひでぇ」

 再びの柔らかさが背中から覆う。引きはがしたばかりの永依。


「べつに二人きりじゃ……もちろん行きたいなら一緒でいいよ」

 なぜそこまでこだわるの。理由も判明せずに流される佳二だ。


「ふーん。アヤシイなー。ミナミちゃん可愛いし狙ってるしょ」

 両頬を膨らませて怒り口調。ハムスターみたいだと意識する。


「そんなはずもねーし。オレより十歳若いんだ。なに考えてる」



「焼き鳥できた。フライパンに串もないけれど。ネギマだよ?」

 青皿に載せられた茶色だ。鶏モモと白ネギ。卵黄まで映える。


「お醬油。めんつゆ。みりん。ハチミツ。お水を混ぜたタレね。一口サイズのモモ肉。カタクリコまぶしてタレに絡めるだけよ。フライパンに油ひいてからお肉とおネギ。フタをして焼くだけ」


「ちょこちょこ確認。タレ加えて中火焼き。トロミでたら完成。お料理学校で学んだ感覚だからねー。説明むずかしいんだけど」

 ミナミちゃんとしては特別意識もないらしい。料理は慣れだ。



「「おいしそう!」」料理皿の傍。ココと永依が叫ぶと同時だ。細指でつまみ口内咀嚼している。満面笑みで目尻まで下がった。



『うんまいっ!!』つづいた叫声。店に響く。美少女二人組だ。

 あっけにとられて見守る佳二。他にできない。言葉を失くす。


「「オカワリちょうだいっ!!」」即催促。なにもない青皿だ。

「「…………」」声のない佳二。ミナミも諦め顔で皿を掴んだ。


「アハハハハ」呆然としていた美里さん。いきなり笑い始めた。

『ハハハハハハハ』全員の追随だ。もはや笑うしか方法もない。


 あわてて食べる必要がなく笑うこと。幸せな気持ちになれる。

永依とココに伝えたいこともあるけれど……それもまた人生だ。

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