88歳

卯月白華

呟き その3

 長生きをするのなら、最期までピンシャンとしていたい。

 私は背を丸めた一生は嫌だ。

 けれどそれが難しいのなら、最期は背筋をピンっと伸ばす。

 そんな最期をと願う。


 例えば、自分が88歳まで生きたとして、それまでの人生と、それ以降の人生をどう生きたいのかと考えた。


 下を向いて歩みたくはない。

 こんな言葉がスポッと湧いて出た。


 歯を噛み締めることがあったとしても、地面を見続けるのは嫌だ。

 向かい風に顔を背けるよりも、涙を零したことに気がつかれないように上を向く。

 ニヤリと不敵に笑って、無様だろうが困難に立ち向かう方が、私は断然良い。

 これを選ぶ。


 理想とするのは、歳を経たからこそ得られる風格が備わること。

 ただただ無意味に歳を重ねて、海の深ささえも無く、紙と見比べてさえこれでもかと薄っぺらいのは絶対にごめんだ。

 歳だけは取った、山より高いプライドだけを目一杯に詰め込んだ、空虚なばかりの老人になることは断固拒否したい。


 思うに、背中が丸まっていると、なんだか世界を下から睨めつけている気がするのだ。

 色々内側にため込んで、歪んだ解決策しか出ないかもと考えてしまう。

 心まで見事にひん曲がりそうで心底遠慮したい。


 心も身体も一本綺麗な筋の通った生き方。

 それを貫き通せたら。


 無駄な緊張を誰かに与えたい訳では決してない。

 けれど目の前にすれば背筋が伸びる。

 思わず襟を正すような人。

 年齢を重ねたからこそ醸し出される何か。

 そういうものをまとえる人生を歩みたい。


 その為に今すぐ出来ることは、猫背矯正のストレッチを可及的速やかに実践してみること、かな。

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88歳 卯月白華 @syoubu

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