88歳は、出産適齢期!  パワードスーツ ガイファント設定 〜長寿のドワーフとエルフでは、考え方が全く異なる〜 KAC20225

逢明日いずな

第1話 黄昏るユーリカリアと、はずむウィルリーン


 エルフのウィルリーンと、ドワーフのユーリカリアは、お互いに85歳である。


 人であれば、高齢になるのだが、長命なエルフとドワーフでは、そうではない。


 2人は、どう見ても20代前半だ。


 ドワーフは、700歳前後、そしてエルフなら、400歳前後が、一般的な寿命と言われている。


 女性の出生率が圧倒的に低いドワーフと、男性出生率が低いエルフでは、その偏りによって、寿命が伸びていると言われているのだ。


 特に女性出生率の低いドワーフは、特に出産可能期間が長くなっている。




 ウィルリーンとユーリカリアは、お互いに85歳でも、見た目が20代となれば、パートナーが欲しくなる年頃でもある。


 ウィルリーンは、シェルリーンと共に、カミュルイアンという夫を見つけている。


 2人は、会ったその日に食事の約束を付けると、カミュルイアンをお持ち帰りしてしまった。


 そのエルフの事情で男性に出会える可能性の無い種族なのに、一番可能性の低い帝国で、出会えてしまったのだ。


 ユーリカリアは、女性出生率の低いドワーフなら、いつでも、男性ドワーフに出会えても、おかしくないのだが、帝国に入った後は、出会えてない。




 ユーリカリアは、ベットの上で、腰や足を上げる運動をしている、ウイルリーンを見つつ、話しかける。


「なあ、ウィル。 お前は、エルフなのだぞ。 お前の種族は、男子誕生率が、とても低いのに、なんで、お前は、カミューと出会えたんだ」


 ユーリカリアは、不満そうにウィルリーンに聞いた。


「それは、運が良かっただけだと思いますけど、でも、私は、嫁と言っても、シェルと共有だから、これから先、カミューには、嫁が、まだ、増える可能性があるわ」


 ユーリカリアは、カミュルイアンに群がる、女性エルフを思い浮かべたようだ。


「まあな。 お前達は、運が良かっただろう、……。 いや、強運だな。 でも、これから先、カミューに寄ってくる女性エルフは、かなり多くなるだろう」


「そうね。 村から離れたエルフなら、カミューを見たら、直ぐに寄ってくるわね。 だから、私達2人が、彼の最初の相手だったというのは、少し驚いたわ」


 村を出てしまったエルフは、冒険者になる事が多いので、冒険者をしているなら、出会う可能性も高いはずなのだ。


「でも、カミューは、44歳だろう。 やっと、男の子から男に変わったところだ。 若いエルフなのだから、これから、出会いが多いだろうな」


 ウィルリーンとユーリカリアが話をしているカミューは、カミュルイアンといい、エルフの中では珍しい男性エルフなのだ。




 エルフの男女比は、一般的には、1:10と言われているが、実際には、1:100の村もあると言われている。


 エルフにおける男性とは、貴重なのだ。


 それが、南の王国から来た新人の、ジューネスティーン達には、その貴重な男性エルフが存在していた。


 そのカミュルイアンを見たシェルリーンとウィルリーンは、直ぐにモーションをかけ、その夜のうちに、2人のパートナーにしてしまっていた。


「なあ、なんで、男性比率の少ないエルフのお前が、夫を持てて、女性比率の少ないドワーフの私が、夫が居ないんだろうな」


 ユーリカリアは、エルフとは逆に、女性比率が非常に少ない。


 ドワーフは、エルフとは反対に、男女比が、20:1以下と言われているので、ユーリカリアのようなドワーフの女性は、とても珍しい。


 だが、ユーリカリアには、そんな浮いた話も無い。


「仕方が無いわよ。 帝国は、人属至上主義の国だから、ドワーフもエルフもだけど、亜人は、奴隷にすることを認められた国なのよ。 高ランクの魔物目当てでもなければ、好き好んで来る国じゃないわよ」


「だよなー。 他国なら、モテたんだけど、ここじゃあ、誰も相手にしてくれないんだよなぁ」


 ユーリカリアは、ドワーフの男性が、全く居ない帝都に、ガッカリした様子でテーブルに顎を付けてボヤいていた。


「そうだな。 そう考えると、ジュネス達のようにギルドの学校を卒業して、直ぐに帝国へ来るなんてのは珍しいよな。 まあ、ジュネスは、長身でガッチリ体型だったから、前衛向きだったな。 でも、他の男子も、それなりだったけど、……。 まあ、一般的な体型だったな」


「そうね。 でも、カミューの胸板もお腹も、結構あったわよ。 ああ、太もももかなり筋肉質だったわ。 まだ、大人の身体つきじゃなかったけど、鍛え上げられていたわよ。 触った感じがとてもよかったわ。 後15年もしたら、ジュネスと同じ位にはなるかもしれないわ」


 シェルリーンは、夜の事を思い出しつつ答えるので、ユーリカリアは、羨ましそうにシェルリーンを見た。


「ほーっ、お前、若すぎる男を捕まえたみたいだな」


 ユーリカリアは、カミュルイアンと、いい仲になったウィルリーンを羨ましいのか、少し、意地悪そうに言った。


「仕方がないでしょ。 エルフの男なんて、村の中で王様扱いなのよ。 知らないエルフが来たら、直ぐに警戒されて、私のような逸れエルフは、会わせないようにされるわ。 だから、カミューのようなエルフは、私にとっては貴重なのよ。 もう、これから先、カミュー以外に出会える男性なんて、私にもシェルにも、居ないわよ」


「まあ、確かに、それは言えるな」


 ユーリカリアは、エルフの事情を考えたら、ウィルリーンが、この先、カミュルイアン以外の男性エルフと出会える可能性は、限りなくゼロに近いだろうと、思ったようだが、それ以上の事を言う事は無かった。




「ねえ、それより、私達、85歳よ。 もう直ぐじゃない、88歳は」


 ユーリカリアが、元気がなさそうだったので、ウィルリーンは、カミュルイアンの話題から、別の話題に切り替えた。


「ん? ああ、そうだな。 エルフもドワーフも、その歳は、良い縁に恵まれるって話だな」


「そうでしょ。 エルフやドワーフの88歳といったら、人の20代中盤に差し掛かる頃よ。 それに、その歳の頃に産んだ子供は、とても才能に恵まれているって昔から言われているわ。 私は、この歳にカミューと巡り会えた事は、私にとって、とても運が強かったわ。 だから、絶対にカミューとの子供が欲しいのよ」


「ああ、88歳か。 ◯が四つだから、縁起がいいとかっていわれてたから、子供を産む適齢期だとかって言われてたな」


「あら、私の方は、♾が二つあるって言われてたわ。 この歳に子供を産めると、子沢山になるとか、男子が生まれるとか言われていたわよ。 だから、88歳の時の子供を持つと、縁起が良いって、それに88歳に産んだ子供が女子でも、その後に男子が生まれることが多いって言われているわ」


 エルフもドワーフも、88歳は、子供を産むのに縁起が良い年齢と言われていたのだった。


「そうだな。 ウィルなら、そうなるだろう。 だったら、シェルは、どうなんだ? 」


 シェルリーンは、弓の名手であって、ウィルリーンと一緒にカミュルイアンのパートナーになっている。


 どちらを選ぶとなったら、お互いに禍根を残すということで、2人と同時に、床を共にしているのだ。


「シェルは、56歳でしょ。 人なら、もう少しで成人するあたりよ。 未成年ギリギリってところじゃない。 でも、これから先、彼女にしても、冒険者をしている限り、男性エルフと出会えるとは思ってないわ。 私もだけど、カミューと出会えたのは、きっと、幸運だと思っているでしょう。 彼女としたら、このまま、カミューと一緒に居られる事が大事だと思うわ。 多分、彼女は、88歳には拘らないと思うわよ」


「まあ、そうだよな。 シェルは、88歳まで、まだ、34年あるものな。 年齢とか関係なく、子供が欲しいと思っているだろうな」


 黄昏たような表情でユーリカリアは言うと、ふと、何かに気がついた様子で、シェルリーンに話しかける。


「でも、お前達2人に子供が出来たら、どうするんだ。 カミューもアンジュも44歳だぞ。 あの歳でも、種付けはできても、身体つきは、まだまだ、子供だ。 お前達2人が、子育てにって事になったら、うちのパーティーは、4人になるって事なのか? 」


 ウィルリーンが、何をあたり前のことを聞くのかと思った表情をする。


「だったら、ジュネスの所に入れて貰えば良いじゃない。 それなら、10人パーティーで行けるでしょ。 そうなると、私とシェルは、旦那様を待つ若妻達なのかしら」


 シェルリーンは、嬉しそうに顔を赤くして、恥じらうように言うと、その様子をユーリカリアは、ジト目で眺めていた。


 ユーリカリアは、その時の様子を思い浮かべたようだ。


「お前なぁ」


 ムッとした様子で、漏らすが、すぐに、真剣な表情に戻すと話を続ける。


「あいつらの装備、あれだけだと思うか? 」


「きっと、それだけじゃないわ。 あの程度の装備で、帝国に来たとは思えないわ。 それに東の森の魔物を倒せるパーティーなのよ。 この前、ウッドタカス達のパーティーが討伐に失敗して、ほぼ全滅だったのに、それを、無傷で倒す程の腕なのよ。 絶対に、何か隠していると思うわ」


 すると、シェルリーンは、真剣な顔で、何かを思い出していた。


「ほら、あのジュネス達の持っていた剣だって、かなり細かったわ。 鞘を見ても、刃幅3cm程度よ。 あれだと、帝都周辺の魔物は倒せても、東の森の魔物には刃が入るか分からないわ。 きっと、何か奥の手があると考えておいた方がいいわ」


「そうなんだよなぁ。 私達はAランクで、向こうは、Dランクなんだよな。 だけど、実力は、私達より上だと思っていた方がいいな」


 今まで、東の森の魔物を倒したパーティーも個人も居ない。


 帝国の軍隊でも、森に帰す程度は出来たが、それは魔道具を使って、追い返しただけだったのだ。


 初めて東の森の魔物を倒したパーティーが、ジューネスティーン達なのだ。


 自分達でも倒すことが出来なかった魔物を、倒したパーティーと一緒に行動するとなったら、自分達が足手まといになる事を、ユーリカリアは考えていたようだ。

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