88歳の介護福祉士

朝焼 雅

おばあちゃん

 僕のおばあちゃんは現役の介護職員だ。

 二十歳から介護福祉士として働き、米寿の現在でも現役なのだが、おばあちゃんはいつも僕に、やりたいことがあるならそれを一生懸命やればいいし、やってみてダメならまた探せばいい、焦らなくていいんだよ。なんて言うから、おばあちゃんはなんで介護士になったの?って聞いたら、なりたくてなったんじゃなくて、これしかやれることがなかったからやっているだけだよって笑いながら言っていた。

 おばあちゃんは傘寿を過ぎた頃から、いつ自分が介護される側になるかわからない歳になったねって寂しそうに言う。

 なぜ、年金で暮らさないで今も働いているの?って聞くと、楽しいから、職場へ行けば色んな人と話せて楽しいからそれが楽しみで身体が動く限り辞めるつもりはないってさ。

 おばあちゃんは昔のお友達もおじいちゃんも天国へ行ってしまって寂しかったけど、仕事へ行けば歳の近いお友達と話せたり、若い職員の子と話せたりするし息子がいて、そのお嫁さんがいて、可愛い孫がいるから今は全然寂しくないよって言うもんだから、僕は嬉しくて泣きそうになった。

 介護って大変だって聞くけど、おばあちゃんを見ていると楽しんでやっている人もいて、そういった職員がいるから安心して介護施設に入ることが出来るんだなって思ったし、こんな素敵な仕事をしているおばあちゃんを心から尊敬するし、僕もおばあちゃんに負けないくらい仕事を頑張らなきゃってやる気を出させてくれる。

 おばあちゃんはいつ死んだって向こうでおじいちゃんやお友達と会えるからいいって言うんだけど、僕はもう少し長生きしてほしいと思い、今日も仕事へ向かう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

88歳の介護福祉士 朝焼 雅 @asayake-masa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ