拝啓、死を願う君へ

シオン

プロローグ 屋上

休日、昼下がり

今日は快晴、雲ひとつない青空とは、今日のことを指すのだろう。

太陽が遮られることもなく、この屋上を照らし出していた。そう、今俺がいるのは屋上で、春の風を肌が撫でて心地いい。

そんな最高な天気の時に、何故彼女は飛び降りを考えたのか、俺は不思議に思った。

だが、助けようなどとは思わない。

心苦しくは、ない。といえば流石に嘘になるが、だが俺は昔から少し、『そういう場面』に出会でくわす事が多かった。

だからか、切り離すことには躊躇がない。

俺は、少女が飛び降りるのを止めようとは思わない。

──その、少女の顔を見るまでは。

願うような、何かを恐れているような、そんな顔を、見るまでは。

顔を見てしまった為か、もう後戻りは出来ない気がした。気づけば、少女に声を掛けていた。

「待てよ。早まっちゃ駄目だ。」

声は震えなくて、良かった。

俺に声を掛けられた少女は、さして 驚くことも無くゆっくりと振り返った。その瞳は今でも忘れない。

「だれ?」

それだけ言われて、俺は少し、怯んでしまった。

それに気付いてか、気付かないのか俺が話出すのを待っていた。

意を決して、と言う程 でもないが、決意して、俺は口を開いた。

「───俺は翔哉光流しょうやみつる。君を……君を『殺す 』人間だ。 」

そんな、でたらめを吐いてる中でも、太陽は信じられないほど眩しく、 綺麗に昼下がりの街を照らしていた ──。

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