この漫才、何かが変?

夜野 舞斗

危険な漫才

「どうもどうも、虎川とらかわ氷河ひょうがと申します」

「オレは石井達也だ」

「で、何の話をするんですか? 僕、今何の話題も出せませんよ」

「そうか! じゃ、氷河頑張れよ!」

「今の話聞いてました!? 漫才の舞台で何を話せば、いいんですか!?」

「ううん、じゃあ、とっておきの話をするしかないか」

「最初からしてくださいっ!」

「じゃ、相談だよな。さっき、オレの先輩が『そこ、殺しとけよ』言ってきたんだが。この舞台で、オレ、誰かやらなきゃいけないのか?」

「何かとんでもない相談受けてません!? えっ、誰かの暗殺依頼を受けてきたんですか?」

「ああ……困ったなぁ」

「困ったで済む話ですかっ!?」

「ううん、その先輩笑ってたんだ。サイコパスなのかなぁ」

「えっ?」

「普段、役者をしている先輩だから、そういうのに嵌っちゃったんだよな。この前も殺人鬼の役をやってったって言うし」

「その役にのめり込んだとして、普通人に頼みます? 自分でやるのがそういうのは楽しいんでしょう」

「まさか、氷河、何でそんなことを知って……まさかっ!」

「いや! 相談受けたんですよね!? 変な勘繰りはやめてくださいっ! 単に事件に出会い過ぎてそういう発想になっただけです!」

「……ええ。その発想って、普通の探偵でもなかなかならないような……」

「はいはい。その発想を考えて……うん、この事件の真相は分かりましたよ」

「えっ?」


「ここからは推理ショーです。よぉく考えた後で、聞いてくださいね」

「お、おう」


「簡単です。先輩は役者なんですよね」

「ん? ああ。確かにそうだな」

「そこから考えると、先輩は役者の言葉を使っていたってことになります」

「となると?」

「その場合の殺すって言うのは、ものの固定を止めるってことなんです。さっき言ったってことは達也先輩に舞台の設営をお願いしたってことですね」

「あっ」

「えっ!?」

「その固定って、あの上にある看板のことかよ」

「まさか、落ちてくるんですかっ!?」

「ああ、ちゃんと殺してなかったからな!」

「僕が今、殺されそうなんですけどっ!? ああ、辱めを受けた上で命の危険まで……もう最悪だぁ!」

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