4-7
気分がいい。
昨日の久々の対局は快勝だった。
今は帰りの新幹線である。もうすぐ東京に着く。こんなに気分のいい遠征帰りは初めてかもしれない。
東京駅に着き、軽い足取りで列車を下りる。
「あっ、加島先生じゃないですか?」
突然声をかけて振り返ると、中年の女性が僕の方を向いていた。
「はい」
「ファンなんです!」
「ええっ、僕の?」
初めて言われたのでびっくりしてしまった。
「はい、今日ちょうどこれ読んでたんですよ。サイン貰えませんか?」
そう言って、『ネタ将なれるかなガイドブック』が差し出された。
「え、僕でいいの? ネタ将じゃないけど」
「ネタ将はみんなそう言うんですよ」
満面の笑みである。これは断れない。
そんなわけで僕は、生まれて初めてのサインをした。
「ありがとうございます! 大切にします」
「うん、これからもネタ将をよろしくお願いします。僕はネタ将じゃないけど」
本当に気分がいい日だ。ただ、どうにも僕はネタ将と思われてしまっているようだ。困ったものである。
『チームネタ将のキセキ』完
チームネタ将のキセキ 清水らくは @shimizurakuha
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