湖畔の別荘で休暇を過ごす五人のバンドメンバー。
資産家の娘リヴィは女王のように振る舞い、お気に入りのジョシュを恋人にして、ジョシュと仲の良いライアンを邪険に扱う。
ライアンは、ある想いを胸に秘めつつ、その仕打ちに耐えていたが――。
願っても叶わない望みを持ってしまった時、人はどう振る舞うでしょうか。
この作品には、そういう望みを胸の内に秘めた人物が登場します。
若者たちの生き生きとした日常と、秘めた想いが落とす濃い影。
言葉選びの美しい、流れるような情景描写と同じ筆致で、いずれ訪れる破綻を暗示するかのような、スリリングな人間関係があぶり出されます。
多くを語ることはできません。
ただ一つ言えるのは、真実が明かされた時、深い湖面に潜む魚影を垣間見た時のような、底知れぬ奥深さを人の心に感じるということ。
読者に深い余韻を残す、大人向けのミステリです。
深い心理描写を味わいたい方や、外国映画の雰囲気にどっぷり浸りたい方には、特にお勧めです。
「GWにホラー&サスペンス、あるいはミステリなどいかが」企画 BEST 5
愛憎絡み合う味わいの濃いサスペンスストーリー。
作者の卓越した筆致と情景描写により読み手はすぐに映像の世界へと導かれる。
また登場人物たちの心理描写も秀逸でそれぞれに潜む支配欲、嫉妬、逃避、諦観などの感情が生々しく伝わってくる。
そしてミステリの要素も含むその結末に読み手は奥歯を噛み、言葉を失いつつも、網膜に広がる美しい情景にきっと嘆息を漏らすはずだ。
すなわちこれはもはや読み物ではなく、素晴らしく出来の良い映画なのかもしれない。