魔法少女キリカ

にゃべ♪

ギャールオが勧誘に現れたホ!

 ごく普通の少女の麟翁寺キリカは、地元を侵略しようと襲ってきたジドリーナ帝国の侵略生物バエンナーに襲われる。その時に助けてくれた魔法生物のトリの力を借りて、彼女は地元を守る戦士、魔法少女キリカになった。

 魔法少女キリカは、今日も帝国の魔の手から地元を守るために戦うのだ!


 ある日、キリカが学校から帰ってくると、自宅の玄関前に見知らぬ人影を確認する。その人影は誰かを待っている風な雰囲気だった。彼女は不審者を想定し、気配を消してこっそりとその人影に近付いていく。

 その人物が誰か特定出来るまで接近した時、キリカは絶句した。


「嘘……?」


 その声に人影も反応。電信柱の影に隠れていた彼女に気付いたその人物は、笑顔を浮かべて気さくに右手を上げる。


「よっ!」


 玄関前でウロウロしていた不審者は、先日キリカがバエンナーと共にふっ飛ばしたジドリーナ帝国四天王の一人、ギャールオ本人だったのだ。

 キリカは既に正体がバレているどころか、自宅まで割れている事に驚き混乱する。


「うわああ!」


 彼女は一目散にその場から逃げ出した。ここで戦闘になったら、近所の人にも自分の正体がバレるかも知れない。キリカはその事態だけは避けようと、広めの場所を目指して懸命に走っていく。

 けれど、変身していない人間体のままでは追いつかれるのも時間の問題だ。彼女は相棒のトリが近くにいないと変身出来ない。


 走りながら連絡手段を考えていたところで、ギャールオに先回りされてしまった。


「待ちなって」

「ぎゃああ!」


 キリカが思いっきり奇声を発したので、慌ててギャールオがその口を塞ぐ。


「ごめん、ちょっと黙って」

「むぐぐ……」

「今日は戦いに来たんじゃないんだ」

「じゃあ何しに来たんだホ」


 さっきの奇声が届いたのか、いつの間にかキリカの側にトリがやってきていた。これでいつでも一瞬で変身が可能になる。ただ、ギャールオに戦闘の意志がないと言う事で、取り敢えずは話を聞く事にした。


「僕は君の強さに感服したんだ」

「はぁ……」


 彼は本当に戦う意志はないらしく、キリカとトリが揃ったと言うのにその態度を全く変えなかった。ギャールオは一旦深呼吸をすると、じっとキリカの顔を見る。


「君も僕達の仲間にならないか?」

「ならない」


 彼女の即答に、ギャールオは困惑する。そうして、両手を前方に広げてプレゼンを開始した。


「何故だ! 三食昼寝付きを約束するぞ!」

「あんたらが襲ってこなけりゃ今でもそうだし」

「堕落してるホ……」

「ほっといて!」


 職場環境で心が動かない事が分かり、彼は別の角度からキリカの心を揺さぶりにかかる。


「なら、幹部の席を用意するから!」

「興味ない」

「じゃあ四天王にしてあげるよ! パリピーナを降格させてその席を」

「何勝手な事言ってんの?」


 ギャールオがパリピーナに言及したところで、その本人が彼の背後から突然現れた。この展開はギャールオにも想定外だったらしく、彼は殊の外動揺する。


「うわあああ!」

「あーしより弱いやつがあーしを追い出すとか、笑えるんだけどー」

「何ィ?」


 パリピーナの一言に、ギャールオの眉がピクリと動く。彼が敵意を同僚に向けたところで、パリピーナはニヤリと口角を上げた。


「あんた四天王の中で最弱じゃん。ウケる~!」

「なら、どっちが強いか勝負だ!」

「いーよ。受けて立つ! 勝つのはあーしだし」


 こうして、急遽ギャールオとパリピーナが戦う展開になる。四天王同士のバトルの勃発に、ずっとこの様子を見守っていたトリも目を丸くした。


「何だかとんでもない事になってきたホ」

「いーじゃん、この際同士討ちさせよ?」


 この状況でもキリカは割と冷静だった。どちらにも特に思い入れがないのもあって、すっかり野次馬状態になっている。キリカとトリが見ている前で、敵幹部同士の戦闘の幕は切って落とされた。

 まず動いたのはギャールオだ。彼はおもむろに右手を上げて、パリピーナに向かって振り下ろした。


「行け、バエンナー!」

「バエンナー!」


 彼の指示で現れたバエンナーは巨大なアメーバタイプ。そいつはいきなりパリピーナの頭上に出現したかと思うと、そのまま彼女に覆いかぶさった。そして彼女を完全に包み込んだところで大爆発。

 その瞬間に強烈な爆風が発生したので、咄嗟にキリカは腕で顔をガードする。


「無茶苦茶だよ」

「仲間相手でも容赦ないホね……」


 キリカ達がドン引きする中、作戦の成功を確信したギャールオはドヤ顔を浮かべた。


「あはははは、これで僕の方が強いと証明された」

「やっつけちゃったの?」

「当然だ。ボクを侮辱したのだからな」


 仲間であっても平気で刃を向けられるギャールオの性格を間近で目にしたキリカは、思わず後ずさりをする。そして、いつでも変身出来るように手にステッキを具現化させた。

 ひとしきり悪役ムーブで高笑いをした彼は、改めてキリカに向かって手を差し出す。


「さあ、席は空いたよ」

「え、えっと……」


 彼女が返答に困惑する中、ギャールオの背後の爆煙がゆっくりと消えていく。そうして、その中からゆらりと人影が浮かび上がった。

 その人影から発生する桁外れの殺意を感じた彼は、頬に一筋の汗を垂らしながら恐る恐る振り返る。


「やってくれるじゃない。あーし、もう完全に切れたから!」

「ぎゃああああ!」


 バエンナーの爆発でガングロアフロになったパリピーナは、ポキリポキリと指を鳴らして姿を消した。次の瞬間には、ギャールオが衝撃音と共に呆気なく空の彼方にふっ飛ばされていく。

 渾身の一撃を入れたパリピーナもまた、彼に追撃を入れるべくその場で超人的なジャンプをして消え去っていった。


 一瞬の内に四天王2人がいなくなり、キリカとトリはその場にポツンと取り残される。


「何だったの一体」

「さあ、ボクにもさっぱり分からないホ……」


 2人は彼らが戻らないのを確認後、魔法で爆発の後処理をして帰宅。次の襲撃に備えてゆっくりと休んだのだった。

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魔法少女キリカ にゃべ♪ @nyabech2016

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