ローズマリーは吸血できない?

水定ゆう

ローズマリー・ブラマンテ先輩(部長)は変わっている。

 私の通う七日森ななかもり高校にはたくさんの部活がある。

 その中で、私が入っているのはこの高校の最大の異端いたん、オカルト部だ。

 私も入りたくて入ったわけじゃないんだけど、この部活は変な先輩しかいない。それか変な同級生しかいない、誰が何と言おうと私は変な部活だと思う。

 何でそう思うか何だけど、


「あっ、ローズマリー部長」

「ん?なんだ、不思議ふしぎ君じゃないか。今から部活かな?」

「って、部長がそれ言っちゃ駄目でしょ。絶対来ない系じゃないですか」

「あはは、まさか」


 ローズマリー・ブラマンテ先輩。

 オカルト部の部長で、七日森高校最大の異端児いたんじの呼び声が高い。

 1年の時にオカルト部を立ち上げ、現在2年生の先輩は、文武両道、成績優秀。誰がどう見ても天才で、それをひけらかさない。クールかつ、ちょっぴり天然な誰からも愛される人だ。

 だけど逆に言えば、誰も近づこうともしない。その理由はすぐにわかる。


「あっ、そうだ。不思議君、シャベル持って来てくれるかな?」

「えっ、何に使うんです?」

「決まっているじゃないか。中庭を掘り起こすのさ」

「えーっと、ちなみにその理由は?」

「昨日手に入った、『スケルトンドッグ』の骨を埋めるんだよ」


 はい、そう言うことです。

 この人はヤバい人です。ヤバいと言うのは、オカルトすぎてイカれているって意味です。


「えーっと、木乃伊みいら先輩と、大神おおがみ先輩には言ってるんですか?」

「言ってないけど、彼らならわかってくれるよ」


 いやいや、わかんないですよ。

 堅物かたぶつの木乃伊先輩とチャラチャラした大神先輩。いくらこの2人でも、そんな変なことに付き合ってくれるわけないじゃないですか。


「俺は構わないが」

「面白そうだなー!よしっ、七菜子ななこちゃん。シャベル持って来てー!」


 はい、そうですよね。そうなんですよね。

 案の定、この2人は平常運転らしい。

 もう、いくらオカルト特性を持ってるからって、そんなにシンクロしないでください。これじゃあ私が変な奴です。


「ほらほら、どうしたのかな?」

「いい加減にしてくださいね。毎回それで先生達から目をつけられてるんですよ!」


 私はもっともなことを言った。

 しかしそんな私の肩に、ローズマリー部長は自分の手を置く。


「大丈夫だよ。いざとなれば、私の力で記憶ごと消すから」

「また血を吸ってぶっ倒れても困るんです!」


 そう、ローズマリー部長は吸血鬼だ。

 昼間でも行動できる吸血鬼で、血を吸わなくても生きていける。代わりに血を吸うことで、他人の記憶に干渉できるらしいけど、この人は・・・


「忘れたんですか!この間も血を飲んで、それ全部吐いてたじゃないですか」

「あれれ?そんなことあったかな?」

「ありましたよ。廊下に大量の血が蛇のった跡みたいになってて、次の日パニックになったじゃないですか!」


 しかもそれって昨日の話だ。

 あの後、放課後まで残って掃除をして、ワックスまでかけさせられたのを覚えている。

 この人は自分が血を飲むと吐くのをすぐに忘れて、それを全部吐くポンコツなんだよ。もう、いい加減にしてほしい。


「いいですか、今日こそはちゃんとしてくださいね!」

「わ、わかったよ。ん?」


 ふとローズマリー部長が固まった。

 その視線を追ってみると、机の上に赤い液体の入ったカップがある。


「大神先輩?それは、トマトジュースですか?」

「うわ、そうだよ」

「うえっ」


 ローズマリー部長が口を押さえて、吐き出した。

 気持ち悪そうにしている。


「ローズマリー部長!」

「部室で、トマトは、禁止だよ」


 バタン!

 ローズマリー部長は、目を回して倒れてしまった。

 ローズマリー先輩は血が飲めない吸血鬼。それから赤いものを食べれない、残念な吸血鬼さんなのでした。

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ローズマリーは吸血できない? 水定ゆう @mizusadayou

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