無知すぎた革命
東 哲信
第1話
熾烈、突如、狂乱のさま、私は床を飛び出し、まだ明け切らぬ寒空の下東京を目指した。
今しかあらぬのだ、明日に為すこともできるが、その覚悟は今にしかあらぬのだ、そう我に言い聞かせ、明朝には讃岐豊浜から観音寺までを500円のサンダルで駆け抜けていた。
特急と新幹線を乗り継ぎ、東京に着く。生まれて初めて目にする人の群れ、「自粛生活など嘘ではないか!」私は感嘆し、覚悟をより深めた。
政権を批判するのは易いことなのだ。が、コロナをここまで拡充したのは国民そのものである。政治が頼みにならぬことをとっくに知りつつ、いつまでも政治に期待し、いつまでも政治が悪いと、変われない時分の醜さの原因を転嫁する社会。目の前にある轟々となりたつ民主主義というイデオロギーはまさしく虚像、主義無き主義、責任無き主体、これが我が国の民主主義であるのだ。
タクシーに礼金を払うと共に私は一通の手紙を預けた、これで残す言葉も、今生の未練も失せたのだ。
ドアが閉まり、徐に車が進み始めた。「次に乗る車は霊柩車だ、」そういって一つ嘯き、私は議事堂の裏庭に向かい駆けた、疾風、韋駄天の如く、警備の止める声を超え宰相の居る裏庭に駆けた。懐に収めたコルトがガチャガチャと揺れる、それをかき消すように心音が高まる。居たぞ、新聞にあった通りだ、あれが宰相だ。
懐からコルトを抜き出す。6尺程迫ったとき、宰相の胸に偉大な一発を飲み込ませた。恐るべし号砲、俺はこの号砲が我が国を変革せしめると信ずるのだ!、無邪気に、なんの疑いもなく!。
まもなくして次の号砲が発せられた。吾が背中から腰へ溢れ出した血流は、やがて股を伝い、地面を這い、宰相の血流と合流した。異にする点など全くない一つの血だまり、そこには政権の終わりを喜ぶ国民の姿、そうして、次なる政権でも同じことを望む進歩せぬ人間の姿があった。人間は変わらぬのだ。
無知すぎた革命 東 哲信 @haradatoshiki
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