異性の既婚者と二人でご飯を食べてはいけない説

白里りこ

不倫談義

 暇つぶしに友達とLINEをしている。


「不倫の定義って、二人で食事をしたかどうかがセーフラインらしい」


 死ぬほど興味のない話題が来た。しかも意味が分からない。だが暇つぶしなので付き合うことにする。


「あっそー。誰が決めたのそれ」

「松川さん」


 誰やそれ。


「誰や松川さん。知らんわ」

「職場の上司」


 ただの知人かい。


「当てにならんなー。さも常識かのように言われてもなー」

「松川さんは常識的だよ」

「松川さん知らんもんら」


 知らんわ。知らなすぎて誤字った。らって何だ。


「それで、異性の既婚者と二人でご飯を食べると問題になるらしい。私も結婚してる人とご飯を食べないように気をつけてる」


 異性の既婚者とは永遠に友達になれない呪いか何かか。気の毒に。


「何それ可哀想。てか不倫とかキョーミねー」

「え、気をつけないの? 結婚してる人とは距離を詰めすぎないように気をつけようよ」

「二人でマック食べるのもダメか」

「ダメだよ!!!!!!!!!!!!」


 ダメなんかい。そんなにビックリマークつけられるほどの禁忌なんかい。


「不便だな。例えばよ、仕事で一緒してて、昼の時間になったらどーすんの?」

「それぞれが一人で食べるんだよ」


 うはは、と笑い声が出た。


「何それwwwwwwww」

「自席でパン食べるとかならOK」

「意味不明〜」

「二人でトンカツ屋とか行くとアウト」

「意味不明すぎて腹が捩れる」

「二人でチャットでお喋りするのはOK」

「二人でメシ食うくらいええやろが」

「ダメだよ!!!」

「何で?」

「不倫じゃん!!」

「は?」

「りこちゃんって、不倫とか気をつけないの!?」


 何なんだ一体。不倫とか縁がないしなあ。てか、そうじゃなくて。


「あのさ、私はね、メシ食うのが不倫になる理由が、皆目分からんって言ってんの」

「そゆことか」


 分かってなかったんかい。


「何でだろうね」

「思考放棄〜」

「ご飯食べるのは人によるらしい。交際がアウトなのは分かる」


 人によるんじゃん! あまねく全ての人に当てはまる倫理観みたいな言い方しやがって!


「じゃあなんでそんなダメだダメだ言われなあかんねん」

「ごめんごめん」

「営業で二人で仕事先回ってて昼にトンカツ屋に入るのの何が問題やねん。ひとっつも分からん」

「確かにwww それなら大丈夫か」

「急に手のひら返すし〜」


 そんなにコロッと意見変えるなら、あんなに激しく主張することないじゃん〜。


「よく考えたら私が不倫とかするようには思えん。気をつけなくても大丈夫だわ」


 また急に意見変える〜。


「私も不倫とか気をつけたことないわ。ありえんし」

「交際しなければいいわけだし。そして交際とかしたくないし」

「ふーん」

「私は気をつけなくても不倫せんな」


 つまり私は意味分からん上に無意味な会話に付き合わされたってことか。やれやれ。


「アナタの頭の中ってどーなってんのかね」

「りこちゃんこそ」


 !?

 !?!?!?


「何でー!?」

「うーん、文章力高いところとか。私は文章下手だし」


 いや、心配しなくても、あなたの文章で私は笑わせてもらいましたよ。



おわり

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異性の既婚者と二人でご飯を食べてはいけない説 白里りこ @Tomaten

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ