爆発オチ

ケチャップ神

爆発オチ


「助手クン、ついに完成したぞ。

全作家の悩みを解決する人類史上最高の発明だ!


そう、その名も『ばくはつおちくん三号』

物語がどれだけ破綻して収拾がつかなくなったとしてもこれで安心さ!」


俺が所属する科学部の部長は頭が悪い。

言動行動容姿全てから頭の良さを感じさせない頭の悪さ。

勢いだけの言動、勢いだけの迷発明、勢いだけの金髪ドリル、全てが勢い任せだ。


そんな部長は真っ黒なボールに導火線を付けただけのゲームに出てくるような爆弾を見せびらかし、ギュインギュインと金髪ドリルを回す、太陽エネルギーのアタッチメント式だ。


地毛のピンクと回る金髪ドリルが目に悪い。


「『えたあくん初代』、『ゆめおちくんセカンド』

あれらも良い発明だったが、どういうわけか作家に怒られ返品されてしまった!

だから私は考えたのだ。

全てを爆発させてしまえば良い、そう芸術は爆発なのだよ助手クン!」


「スバラシイハツメイデスハカセ」


「ハッハッハ、そうだろう、そうだろう。

私の天才ぶりを崇めるが良い、称えるが良い、世界一の天才発明家はここにいるぞ」


「ワースゴイスゴイ」


「さてと、どういう効果か説明したいのだが私は小説を書いたことが無い」


「セカイイチ!スゴイ!」


手元のスマホをいじりながら、部長を適当に褒めておく。

どうせ、どういう返答をしたところでこの発明のオチは一つしかない。

この部長、頭は悪いが腕は確かなのだ、そんな部長が爆発オチと言うからには、爆発オチになるのだろう。


「なので、助手くんが小学生の頃に書いた自作小説を持ってきた」


は?

おいバカ、止めろ。

何言ってんだ、それが人間のやることかよ。

そんなもの、どこで見つけやがった、ぶっころすぞこのアマ。


「主人公は助手くん本人、物語は学校に飛ぶサメが襲って来てチェーンソーで戦う映画化予定の作品!

素晴らしい、どこにも連載すらしてないのに、映画化まで話が進行しているのが素晴らしい!しかし、安心して欲しい。

こんな小説でも『ばくはつおちくん三号』にかかれば、映画化も可能な名作になる」


表紙にサメが書かれた自由帳に爆弾を叩きつけようとしている部長の腹を殴る。

くっそ、前と違って胴体が硬ぇ。

どれだけ衝撃吸収シャツ着込んでやがる、昔なら軽々と殴り飛ばさせてくれただろうが。


顔なら効果があるのに、金髪ドリルが応戦してくるせいで殴れねぇ。

この卑怯者、正々堂々戦いやがれ。


「突然殴りかかって来るとは、どういうことなのかな?

まあ良い、私と助手くんの仲だ、許してあげようでは無いか


そもそも、文句があるなら暴力より、言葉を先に使って欲しい…というか急に殴りかかられるとちょっと怖い」


うるせえ!

俺の黒歴史小説を急に持ってくるほうが悪いんだよ!

部屋の押し入れに閉まってた筈なのに、なんで持ってやがる。


「そうかわかったぞ、安心してくれ不法侵入はしていない。

この前助手くんの家に行ったのだが生憎の留守、どうしたものかと悩んでいたら助手くんの母親が家に入れてくれてな

どういう訳か、食事の世話になり、思い出話と盛り上がり、君の書いた数々の小説も見せてくれたのだ」


部長は背中からロボアームを出し、サメが表紙のノートを持たせる。

サメ・イン・ワンダーランド、サメンジャーズ、シャーク・ホームズ、シャークマン…

今まで書いた俺のサメ小説達が、ロボアームでカチャカチャと見せびらかされている、この世に神はいないのか。


いないかも知れない。


いたらこんな目にあっていない。

神はダメだ、神は俺を裏切る、神なんて信用できねぇ。


俺が頼るべきはサメだ。

今までの人生、俺はサメと生きてきた。

これからもサメと生きていく。

だから俺が頼るべきは神じゃない、サメだ。

頼むサメ様、力をくれ。

力だ。

力さえあればこんなことにはなっていない。

頼む。

サメさまシャークさま、出てきて俺に力を貸してくれ。


『力が欲しいサメ?』


ああ欲しい。

俺はサメを裏切らない。

だから、俺に力を、あの部長にサメの力を見せてやりたんだ。


『いやーそれは無理サメ』


えっ?


『あの部長さん、この世界の神様だから無理サメ』


いやいや、ちょっと待ってくれ。

あんなのが神様の世界なんて、ろくでもない世界じゃないか!

あっだからこんなことになってるのか…


『そうサメ、そうサメ、だからこの世界では諦めたほうがいいサメ』


この世には神どころかサメすらいないのか。

どうしてこんなことになってしまったのだ、何故だ、何故サメは俺を裏切る。


『ただのサメだからサメ』


サメは俺を裏切った。

部長も俺を裏切った。

もう良い、さっさとこの世界を終わらせてくれ。


爆発オチなんだろう。

早く終わらせてくれ、こんなに俺に優しくない世界、さっさと終わらせてくれ。


「むっ、助手くんから変なサメの気配を感じるな。

とりあえず、この『ばくはつおちくん三号』で退治させてもらうとしよう、これでもくらえー」


爆弾が俺の頭上を超え、サメに当たり爆発する


『サメェェェェェェェェェェェェェェェェェェ』


サメは爆発して死んだ。

部長はドヤ顔で、金髪ドリルをギュインギュインさせている。


この世からサメは消えてしまった。

いるのは、神だけだ。

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