第4話 最高の卵とじ
私とフェルルは魚テーブルに着いて、ミフユさんを待った。
一体どんな料理が出てくるんだろう。
知らないレストランで、これから出てくる料理を楽しみすぎて待ちきれないみたいな感覚に似ていた。
「フェルル、ちなみにだけどあの卵って一個どのくらいするの?」
「えっ?うーんそうだなー、安くても1万?」
「マジで?」
「マジマジ。大マジだよ」
フェルルの表情は真顔のまま一切変わらない。そんな貴重で高いものを食べられるなんて、なんで幸運なんだと思った。
「でも師匠、料理は値段じゃないよ」
「おっ、いいこと言うね」
「料理人の腕が良くないと、どんなに良いものでも美味しくないもん」
フェルルの言うことは
その点で言えば、ミフユさんは完璧。だけど、もう一つ絶対に忘れちゃいけない隠し味がある。
「フェルル、もっと大事なものを忘れてるよ」
「大事なもの?」
「それはね……」
私が答えようとしたその時、ミフユさんの声がした。
「クロエさん、フェルルさん。出来ましたよー」
「「待ってましたー!!」」
私とフェルルは子供のように目をキラキラと輝かせて、ミフユさんの手に持ったトレイの上に置かれた3つの
「丼?丼ものですか?」
「はい。駄目でしたか?」
「いえ、全然大丈夫です」
「よかったです。今回なんですけど、せっかくですので、これを作ってみました。自信作です」
そう言ってミフユさんが私達の前に並べたのは、ふわふわした
「
「玉子、丼?」
フェルルは首を傾げる。
流石に騎士の家では出なかったのだろう。そもそも、私だってこんな良いものが食べられるなんて、思いもよらなかった。
日本だけしか食べられないと思っていて、流石にこの世界にはないだろうと寂しい思いをしていたが、いざ出てくると感動だ。
「はい。せっかく良い卵でしたので、ここはシンプルに卵焼きを作ったり、プリンみたいに
って、簡単に言うけど、丼ものって結構大変だ。
「師匠、そんな怖い顔しないで早く食べようよ」
「そうだよね。いただきます、ミフユさん」
「はい、どうぞ召し上がれ」
ミフユさんは笑顔で私達に言ってくれた。
手元に置かれたレンゲのようなスプーンで
ふぅふぅと、少し冷ましてから口の中に運ぶとその瞬間、
「旨い。旨すぎる!」
今までに食べて来たどんな玉子丼よりも美味しい。
最初に飛び込んできたのは、やっぱり卵だ。ふわっふわトロトロの
「玉子丼?なんて食べたことなかったけど、美味しいね、師匠」
「うん。でも凄いのは玉子だけじゃないよ」
「えっ?」
この味を引き立てているのは、
だからこそ、こんな完璧なマリアージュが生まれるんだと思うと、感動ものだ。
「お米も美味しい。一粒一粒が、光ってるよ」
「本当だー」
前にグルメ漫画でやってたけど、お米を一粒一粒揃えることで、最高に美味しくなるそうだ。
まさにそんな感じで、本来ならまばらになるはずの米の大きさが、かなり揃っている。
「もしかして、ミフユさんが!」
「いえ、少しお米の粒の大きさを
それを聞いて、
そんな
だけどそれだけのことが出来てこその、プロ。
私はそんな最高なご飯を食べさせてもらって、今でもほっぺが落ちそうになりました。
「「ごちそうさまでした」」
「はい、大変美味しくいただいてもらえて、ありがとうございます」
ミフユさんの笑顔は素敵だった。
気づけば私とフェルルはお腹いっぱいで動けず、表情は
「ミフユさん、ちなみにこの玉子丼の名前って、何ですか?」
「えっ、名前ですか?」
「はい」
私はせっかくなので、ミフユさんオリジナルとしておきたかった。
するとミフユさんは少しだけ考えてから、私達にこう発した。
「勇者と師匠の愛した
ミフユさんは可愛らしく笑った。
だけど勇者と師匠なんて、かなりのパワーワードだ。でも良い。
お腹を抑えて、大満足の私達はこの日のご飯を忘れないのでした。
コカトリスの卵 水定ゆう @mizusadayou
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