第3話 レッツ、クッキング!

 私とフェルルは町に戻って来た。

 そこで冒険者ギルドに立ち寄ってから、今は宿屋『篠月』に帰るところだ。


「でもよかったね、卵が3つもあって」

「うん。1つは、納品のうひんしちゃったけど、残りの2つは持って帰れたね」


 フェルルは嬉しそうだ。

 こんな楽しそうで、愉快ゆかいなフェルルの顔を見るのはそうない。

 それだけ旨いのだと思うと、私も今から楽しみだった。


「でも、ミフユさんに何を作ってもらうの?」

「うーん、やっぱりプリンかなー」

「プリンかー。甘くて美味しいよね。あのカラメルシロップが、アクセントになって甘いとしょっぱいが口の中で、ジュワーって溶けていく。あー、想像しただけでお腹空いて来た」


 私の頭の中では、プルルンッと大っきなプリンが揺れていた。

 だけどこっちもある。


「私はシンプルに卵焼きが好きかな」

「卵焼き?」

「うん。ヒノモトの朝ご飯といったら、まずは白米。それからお味噌汁に、さけの塩焼き。でもそこにいろどりをすなら、やっぱり黄色くて、ふわっふわの甘い卵焼きだよ」

「へぇー」


 しかしフェルルの顔は浮かなかった。

 それもそうだ。日本系とヨーロッパ系だと、そもそも食文化も違うもんね。

 だけど何が来てもいいや。とにかくお腹と満腹まんぷくを満たしてくれることを、勝手に期待する。


「ミフユさんただいまー」


 私は宿に戻ると、ミフユさんに出迎えられた。


「あら、クロエちゃんにフェルルちゃん。今日は早いのね」

「それなんですけど、実はミフユさんに調理してもらいたいものがあって」

「調理?ええ、いいわよ」


 その言葉が聞けてよかった。

 もし断られたらと思うと、ホッと胸を撫で下ろす。


「それで、一体何を調理するの?」

「それがですね、これなんですけど」

「まぁ、これってコカトリスの卵?」

「はい」


 ミフユさん、知ってたんだ。知らなかった。

 でもそれなら説明をはぶける。


「ミフユさん、コカトリスの卵を使って料理してください!」

「えっ!?」

「「お願いします!!」」


 私とフェルルは頭を下げる。

 すると困った素振りを見せるミフユさんだったが、「上手く出来るかわからないけど、やってみるわね」と頼もしいことを言ってくれた。


「それで、希望はあるのかしら?」

「「卵焼き(プリン)!!」」


 まあこうなるよね。話の流れ的に、この衝突は回避かいひ出来ないよ。

 だけどミフユさんは渡された2つの卵を持って、一瞬考えると、ポンと手を叩いてキッチンの方に行ってしまった。


「一体何を作るのかな?」

「わかんない。でも、きっと美味しいのだよ!」

「だよね」


 私とフェルルは互いの顔を見合うと、にこやかに笑いました。

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