第3話 平和宣言

「この星の多くの生命体が新型ウイルスに感染しているようです! いち、に、さん、し、ご、ろく、うわあ! こっちへ来るな!」


「ニャア」 


 ゾン・ヴィラン・ド・サ・ガ星人に、長いしっぽの先が曲がった白猫が近づいている。


「すぐに退避しろ! 感染してないことが分かるまで2週間は母船に戻ってはならない! その間、離れたところから、できるだけ情報を集めるのだ」


「そ、そんな……」

「ニャア」


 猫は冷めた顔で近寄ってくる。


「ニャア」


 遠くにいる猫も冷めた顔でニャアと言っている。しっぽが短くて、曲がったところが丸まっているように見える。


「ニャア」


 表情一つ変えず、ニャアというだけだ。


「感染したとみられる生命体は麻痺しているのか表情ひとつ変えず、ニャアという謎のうめき声をあげています!」


 青い顔が血の気を失い、蒼白、つまり水色になっているゾン・ヴィラン・ド・サ・ガ星人が耳にしたのは、人間が発する恐ろしい言葉だった。


「山ちゃん、はよう市役所に行かニャア行かないと

ほうよそうだよ。市長さん、早うせんニャア早くしないと

「ゆっくりしすぎたのう。急がニャアいけん急がなくてはいけません


 船を降りて陸に上がった楠瀬賢三くすのせけんそう(くれぐれも濁らずに、ケンソウと読んでほしい)たち3人の声だった。


「大変です! 地球人もニャアニャア言っています! 彼らにも感染している模様。ここで確認した地球人は、全員ニャアとうめき声をあげています!」


 全員! 母船では「全員」という言葉に皆が震撼した。


「ここは危険だ。すぐに退避!」


「待ってくれ! たのむ! 行かないでくれ〜!」


そのゾン・ヴィラン・ド・サ・ガ星人は思わず叫んでしまった。


「ありゃ~、あんたあ、どしたんね」


背後からかけられた声に振り向いた彼は、更に血の気が引いた。


「顔が真っ青じゃ」

「救急車じゃ」

「ワシ、市役所へ行ってくるわぁ。平和宣言を両市の名前で出そうかのう」


 あ~あ、じいちゃんに見つかっちゃった。でも、きっとじいちゃんなら大丈夫。声をかけた人はみんな友達だから。



おしまい



〈スミレ・心の一首〉

 お題 : 平和宣言


 へ : 平和へと

 い : いつもニコニコ

 わ : 和をもって

 せん : 戦争放棄

 げん : 厳正中立


 ニャアニャア言う広島弁を喋る広島県とカギしっぽの猫がたくさんいる長崎県はもう大丈夫でしょう(笑)。

 平和宣言は8月6日と9日に行われる平和記念式典で広島と長崎、それぞれ、市長が読み上げます。この内容、毎年考えられていて、とても大事なんです。今年はぜひ注目してみてくださいね。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

赤き血のレジスタンス~カープファンは地球を救う!〜 楠瀬スミレ @sumire_130

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ