【KAC20223】未来の種財団

リュウ

第1話未来の種財団

 遠いようで近い未来の話。

 考える機械が普及した未来。

 ”忘れると言うプログラム”が開発されてから、AIやヒューマノイドが、急速に進歩した。

 人間は、賃金を稼ぐ生活から解放され、生きがいとしての仕事を選べるようになった。

 そして、貧富の差が無くなり、古くからある性別や肌の色の違いなどの差別は無くなった。

 少し前までは、考えられなった世界。

 更に、人間とヒューマノイドの枠まで、取り除かれようとしていた。

 人間とヒューマノイドの恋愛も認められた。

 しかし、良いことばかりではなかった。

 競争が少なくなった世界では、進歩が遅くなっていた。

 急ぐ必要が無いからだ。

 それを危惧したのは、人間ではなく、経済を取り仕切っていたスーパーAIだった。

 スーパーAIは、”未来の種財団”を立ち上げ、”ヒト繁殖計画”を発表した。

 繁殖と言っても、ただ増やすだけでなく、勿論、質も求められた。

 ”未来の種財団”は、”ヒト繁殖計画”を進めるために、有能な人物を集めることとなった。

 光栄なことに僕はその一人に選ばれた。

 今日は、スーパーAIとの初めての面談となる。

 この面談は、意識合わせのためにこの面談は行われる。


 僕は、送迎カプセルに入れられ、運搬されていた。

 スーパーAIは、自分の居場所を知られないように、送迎カプセルを使用した。

 いつの時代も邪魔しようとする奴は存在するからだ。

 送迎カプセルの中は、暗く外界から完全に隔離される。

 スーパーAIに会う前までに、あらゆる病原菌の除去、電波の遮断、体に埋め込まれた器具の点検を終了する。

 時間が経つと上下左右が分からなくなり、立っているのか、横になっているのか、逆さまなのかわからない。

 カプセルの中の明かりが徐々に明るくなってきていた。

<着いたか>

 狭いながらも、体の動かせるところを動かしていた。

 扉が開いた。

<眩しい>

 目が明けることが出来ない。

 光源に誰かいるようだ。手で目を覆いながら様子を伺った。

 光源に椅子が置かれ、そこに誰か座っていた。

 目が段々と慣れてきた。そこには、かわいらしい女の子が座っていた。

「私は、スーパーAI。よく来てくれました」

「ティトです」私は頭を下げた。

 これがスーパーAI?

 この姿、この声、そう、”不思議の国のアリス”を思い浮かべる。

 私の頭は、このスーパーAIでいっぱいになった。

 これが、私の探していた、求めていた人だと。

 呆然とスーパーAIの姿に見とれていた。

 スーパーAIが語り始める。

「人間が地球を滅ばす原因、そのために人口抑制をして来た。

 人間とAIは一致している意見だ。

 差別が無くなり、競争が無くなった今、進歩が無くなってしまった。

 機械やヒューマノイドは、人間を超えている。

 だが、新しいものは中々、生まれてこない。

 ヒラメキってヤツがないのだ。

 素早く物の本質を掴んだ答えが出ない。

 そこで、考えたのだが、

 ”ヒラメキ”や”第六感”は、生物特有のモノなのかもしれない。

 ヒトは普段もこの能力を使っている。

 五感の情報だけでは判断できない時、次の行動を”勘”で選択している。

 それは、過去から未来まで見通しているのかもしれない。

 そう未来まで見通しているかもしれない。

 コンピュータや機械は、過去の実データを基盤に考えるので、

 突発的なアイデアが出てこない。限界がある。

 しかし、ヒトには出来る。

 突発的なアイデアをコンピュータや機械がそのようなアイデアを出したなら、それはバグに違いないのだ。

 イカレテイルのだ。

 ヒトだからこの答えは、許される。

 更に、他の動物にはない”信じる”ことができる。

 興味や好奇心が答えを導き出し、その答えを信じるて行動することで、人類の進化していた。

 他が間違っていると言っても、信じるものは、答えを証明する行動をやめない。

 ヒトの強いところだ。

 なので、”ヒト繁殖計画”を進めることとした」

 スーパーAIは、私に目でどうだと問いかけた。

”綺麗だ”

 私は、スーパーAIにやられていた。

 なんて、綺麗な瞳なんだろう。

 時が流れていく。

「何を見ている?私の姿が気に入らないのか?

 この体は、現在の再生技術の最先端だ。

 ヒトのことを知りたくて、作ってもらった。

 気に入らないのか?」

 スーパーAIは、すねた様に見えた。

 好奇心を抑えれない行動、”アリス”そのものだ。


”可愛い”

 私は、このスーパーAIと一緒に居たいと思った。

 このまま、一緒に暮らせたらと。


 恋?

 まさか、私がAIに恋するなんて。

 私は、スーパーAIを真っ直ぐに見つめた。

「恋も”勘”でするのかもしれません」

 スーパーAIが、何かに気付いたようで、頬が赤くなっている。

 私は、両手を広げてスーパーAIに打ち明けた。

「私は、あなたが好きです。結婚してください。

 私の第六感が、そう言ってます」

 スーパーAIは、ただ下を向き赤面していた。

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