友情と孤独。想いが紡いだ一本の糸の物語。

 図書館に併設されたカフェでアルバイトをする主人公のミサキと、目は見えないが不思議な能力を持つ女性ヒバナのコンビが、持ち込まれた不可思議な相談に挑む、というあらすじの時点で引き込まれました。
 本来こちらの世界に存在しないはずの『蠧魚』の存在と、それを引き寄せる複雑に絡み合った人間の想い。
 ファンタジー色の強い作品でありながら、読みながらどこか「ああ、この感情わかるわ」と共感してしまう、美しく繊細な心理描写が素晴らしかったです。
 甘いだけではないけれど、とても心地よいひと時を過ごせる、まさに静かなカフェで飲むコーヒーのような作品でした。