そして、彼女は小説執筆よりもガチャを回す

アーカーシャチャンネル

彼女の第六感は当たるのか?

「第六感の第六巻、これでは駄洒落だな」


 あるバーチャル投稿者はノートパソコンの前で小説を執筆している。その理由は簡単だ。


「ここ最近のSNSの動向は、どう考えてもおかしい」


 様々なネガティブが積み重なり、それは自分自身が望まないような形になっている。まるで、過去に警鐘していたことが現実になったかのように。


(占いは占いに過ぎない、おみくじもそれは同じこと。予言が的中する可能性はあれど、こういう形の予言が的中するのはあってはいけないのだ)


 そして、彼女はネガティブであふれたSNSのつぶやきサイトを閉じ、別のブラウザでソーシャルゲームの画面を立ち上げた。


 小説の方は既に書き上げており、あとはタイマー予約でアップするだけである。何故にタイマーなのかというと、投稿開始時間より前に書き上げてしまったから。



 彼女は小説執筆をメインに活動しているわけではなく、もう一つの顔である……バーチャル動画投稿者としての一面もあった。


「この小説はお題発表後に書いたものだが、下手に即アップすると何かを疑われる」


 懸念しているのは盗作などのようなガイドライン違反ではない。同ネタ多数であふれている中で自分の作品がオンリーワンであることを目立たせるためだった。


「第六感というテーマ自体、色々と解釈もできる。それを極めれば、同ネタ多数の投稿作品の中で自分の作品を目立たせることも容易だ」


 この発言自体が一種のフラグであると気づかず、彼女は別画面のソシャゲをチェックする。


 コンテストへのエントリー作品という事もあり一次創作で挑戦しないといけない。そのあたりはぬかりなかったのだが……。



 この日、プレイしているソシャゲではガチャキャンペーンが実施されていた。最大で100連も無料でガチャが引けるというものである。


 ソシャゲで無料ガチャというと、一種の客寄せという一面もあるのだが、それ以上にSNS上で話題となるという個所もあった。


 だからこそ、一定の時期には必ずと言っていいほど様々なソシャゲで無料ガチャは実施される。CMを流す作品もあれば、予告なしの無料ガチャもあるだろう。


「100連引けたとして、思ったものが当たる確率はたかが知れている。何も考えない方が……」


 そして、彼女はマウスでルーレットをクリックすると、画面が普段以上に変化していた。つまり、10連以上が確定したことを証明している。


 10連位であれば最低ラインなのだが唐突にルーレットは輝きだし、数字もどんどん上がっていくように見えた。


「えっ? ちょっと待って、小説の方もタイマー予約していたのに」


 慌てる彼女だが、ルーレットの演出も更に変化していき、その結果は予想外の展開を生み出す。

 


 小説の方は、この確変から数分後にタイマー予約で発表されるも、タイミングを逃したかのように閲覧数は伸びない。


 彼女にも原因の方はわかっていた。SNSのタイムラインの話題を完全に逃してしまい、そこに乗せることができなかったからである。


 残念ながら、彼女は『バズり』のタイミングを完全に読み違えたのだ。第六感は外れたことになるだろう。


「こういう時に限って、フラグは発動するものなのね」


 伸びないといっても、小説の閲覧数は1桁台で玉砕したわけではない。そこは、計算ミスではなかった。単純にタイミングが悪かっただけなのである。



 それでも、SNS上では彼女の引きが別の所で注目されていた。ネガティブな話題を吹き飛ばすような彼女が引いたもの、それは……。


【まさかの初日50連だと?】


【100連の画像は稀に目撃しているが、50は目撃していない】


【ピンポイントで初日に50を引いたというのか?】


【大抵は10連とか20連の画像が多いが、どういう事だ?】


 タイムラインを見ると、彼女がアップした50連無料の無料ガチャルーレットの結果が小説以上に『バズ』っていたのだ。


 これには想定外と考えていたようだが、直近のネガティブな話題を踏まえると、それを少しでも緩和させるという意味では正解だったのかもしれない。


 50連の無料ガチャは確定した。しかし、今は引く時ではないのである。小説のタイマー投稿タイミングを誤った時のように、ガチャの更新タイミングも間違ってはいけないのだ。



 この予想が第六感として的中しないことを、彼女は願うばかりである。

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