とある秋の車中泊
宙返りになった義妹を俺は体で受け止めた。
「…………ぁ、う」
痛そうに目をあける歩花は、自分がどうなったか理解できていなかったようだ。そんな俺は内心冷や冷やしていた。それと同時に後悔もした。
歩花を流行りの『電動バイク』に乗せてしまったことを。
特定小型原動機付自転車――つまり“免許なし”で気軽に乗れる電動バイクを試しで購入し、近場の河川敷で試してみた。
歩花が先に乗りたいと言い出し、俺は渋々了承。そして、やっぱり歩花は転倒したのである。
幸い、俺の胸に飛び込む形でよかった。もしも土手に転落していたら大惨事だった。
「危なかったぞ、歩花」
「ごめんね、お兄ちゃん」
「まだ早かったかな」
「えー。でも歩花だって紺ちゃんみたいにバイク乗れるようになりたいよぅ」
そういえばそうだな。
歩花の友人である紺は、すでに普通二輪(AT小型限定)を取得済み。八月にはバイクで俺たちと一緒に旅をするという根性を見せた。
後半は、執事のアルフレッドさんが運転するX-VANにトランポしてたが。それでも、アレは素直に凄いと思った。
そんな歩花もバイクに興味があったようだ。
なので俺はまず、流行りの電動バイクに目をつけた。
20km/hまでしか出ないし、最近は法律も変わって合法で乗車可能。特定小型原動機付自転車という括りのおかげで、免許不要で乗れてしまうのだ。
しかし、危険も付きまとう。
ネットではあまり良い印象はない。
いや、そもそも乗っている人をほとんど見かけない。危険だからだ。
だけど東京とか都会へ行けば結構乗っている人を見かけるらしいんだよな。
「それより、車の方が安全でいいぞ」
「うん、歩花もいつか普通免許とか二輪免許を取りたいな」
「高校三年なって誕生日の二か月前になれば取れるさ」
「でも、二輪は十六歳から取れるよね」
さすがの歩花もそれくらいは調べていたか。
「ああ、そうだよ。まさか取りたいのか?」
「紺ちゃんに負けてられないからね。わたしもお兄ちゃんに追いつけるよう、がんばりたい」
目標があることはいいことだ。それに、資格はたくさんある方が便利でいい。ステータスの向上にもなるし、自慢にもなる。メリットだらけだ。
今の俺は、原付免許から取得して普通免許を取った。そうだな、歩花も俺と同じように歩んで欲しいな。
「分かった。じゃあ、原付でも取るか?」
「やったー! 学校に許可もらうね!」
まずはそこからだな。
歩花の通う学校は、俺もかつて通っていた。あそこは許可制だが、紺が許可を貰えたくらいなので緩い方だ。まあ大丈夫だろう。
そんなこんなで夜になった。
今夜は無人の河川敷で『車中泊』だ。
愛車のキャンピングカー『インディ272』で過ごす。
あれから装備を大幅に変更し、ポータブル電源を『シャクリ』のリン酸鉄・大容量2000Wを二台搭載。
緊急のことも考え、携帯トイレや大きい方も可能なポータブルトイレも導入。まあ、通常はコンビニで済ませてしまうが。
「今日は簡単にカルボナーラでいくか」
「いいね、お兄ちゃん!」
歩花も手伝ってくれた。
熱のこもりにくいIHが大活躍。ポータブル電源が大容量だから、ぜんぜん余裕だ。
パスタを茹で、ベーコンを切っていく。
IH対応のミニフライパンにオリーブオイルおよびベーコンを投入。火にかけ炒めていく。
じゅうじゅうと良い音が響く。う~ん、いいね。この瞬間がたまらない。
最後に塩、粉チーズそしてブラックペッパーを軽く振って――完成。
「できたー!」
「おぉー! さすがお兄ちゃん。めちゃくちゃ美味しそう~」
クッキングペーパーを敷いたお皿に盛り付けて完了と。お皿にペーパーを敷くことにより、洗い物を減らす作戦だ。実際これが楽で便利だ。
スノーパーク製のチタンカップにお茶を注ぐ。
「「いただきまーす!!」」
フォークでカルボナーラを巻き取る。それを口へ……うんっまッ!!
チーズがいい感じに絡んで、更にブラックペッパーの香りも交わって濃厚で美味い。いい塩梅で完成したなぁ。大成功だ!
楽しい飯を終えた。
あとはコンビニで買った歩花の大好物・プッツンプリンを食後のデザートに。
「しあわせ~~~」
とろーんと歩花は表情をとろけそうなほどに崩す。いいね、その笑顔が見たかった。
これからも歩花と車中泊を続ける。
少なくとも結婚するまでは――。
◆ありがとうございました!
番外編をこれにて〆させていただきます!
また気が向いたら追加更新します。
ヤンデレ義妹と旅するえっちな車中泊生活 桜井正宗 @hana6hana
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