選択的購入-セレクションセンス-

月乃兎姫

第1話

 何事においても【第六感シックスセンス】というものが存在している。それは知識や経験、更には本能を司る能力をも超越した感覚の一つである。まあ大層な言葉を並べてはいるが、要するに【かん】のことである。

 しかしながら勘とは一口に述べても、その実では過去に体験した経験や情報、または知識や思考が裏付けされている。これは無意識下で誰でも選択し、行動に移しているのだ。


 たとえば、貴方は街にある本屋の数多くある棚の前に立っているとする。さて、始めに手に取るのはどれだろうか? 目線の先に並んでいる背表紙とタイトル、目線よりも僅かに下に位置し表紙が見えるもの、あるいは店員がちょっとした気遣いのお手製ポップ、出版社が売り出したいポップ……様々な情報の中で、一際目を惹くものを選ぶはずだ。


 そこには裏打ちされた知識・情報・経験などの他に、なんとなくこれだ!というものを選ぶことが少なくない。ラノベで言えば、表紙に描かれている派手な配色と美男美少女、長すぎるとも思えるタイトルが連なっている流行りもの、何かしらヒントがあるはずなのだ。


 以前ここの出版社のを買って失敗したことがある、ラノベは絵とタイトルで選ぶと後悔する、1巻目2巻目だと打ち切られる恐れがあるから単巻を避け、続編が多いのを選ぼう。これもまた意識的にまたは無意識下での行動と思考にすぎない。


 それまで発売されれば反射で本を購入していたが、ある時を境に様子見や買い控えることが出てくる。これがいわゆる選択的購入セレクションセンスなのだ。


 ただ物を買い集めるコレクションから選択する権利であるセレクションへの移行。

 もしかすると第六感がそう貴方に囁きかけているのかもしれない。


 もう一人の自分という、第六感が――。

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