彼との日々の終焉~悲しいミライを予感する~

DITinoue(上楽竜文)

彼との日々の終焉~悲しいミライを予感する~

 芦田めぐみ、二十歳はたち。大学に通いながらマッチングアプリを使いこなす達人になった。それを使って私は恋を探す。いわゆる、私は恋する乙女というところかな。

ガタンガタンガタンガタン

今乗っている電車はもうじき橋を渡り切る。その先にはオシャレな街のオシャレな駅が待っている。そこには“愛する人”がいて・・・・・キャーッ!!


シュー・・・・・ガタン

駅に着いた電車は重そうにドアを開ける。

ドキドキドキ

彼・・・・・佐々木景祐君は改札の向こうで待っていた。私に気づくとオーイと手を振る。ICを改札にかざすと、猛ダッシュで彼の胸元に飛び込んだ!

「久しぶり~!!ケイ君、瘦せたんじゃない??」

「そんなことないさ。って、周りみんなこっち見てるぜ」

抱き着くのをやめて周りを見るとみんながチラチラとコチラを見ていた。

ポワーッ

自分の顔が赤くなるのがしっかりと分かった。

「け、ケイ君、い、行こ!」

2人はカフェに行くためにバスに乗った。


 ズズズズズ

「ケイ君、飲み方汚いよ」

「ごめんごめん」

これだけの会話がすごく楽しく、弾んでいる。今までマッチングで出会った人とは何度もデートした。でも、ここまで会話が弾むことは無かったな。彼の魅力はどこから出てくるんだろう。いつか聞いてみたいと思った・・・・・なら、聞いちゃお!

「ケイ君の魅力はどこから出てるの?」

「知らない」

「・・・・・・・」

会話終了。これはどうやらダメだったらしい。


それから、しばらくワイワイと世間話や将来のこと、最近ハマってるアニメ、趣味などで楽しく話していた。日が暮れ始めたときに、私は危険を察知した。


悲しいミライを予感する――


私だけが持ってる能力じゃないよ。ちょっとした未来を予知したり予想したりするのは誰だってできること。

でも、私はなぜか嫌な未来ばかり予感しちゃうの。それが毎回当たっちゃうって言う。最近で言ったら彼氏誘って遊園地行ったら別れを予感した。で、ジェットコースターを下りたら「別れよう」って言われて分かれたことなんか。

でも、今回は何か別の未来が見える。そんなフラれるってことよりももっともっと悲しくて恐ろしい未来が――


「どうした」

「ああ、別に何でもないよ」

「何か考えてたっぽいけど」

「え、次のデート場所どこがいいかなーって?」

「そうか」

そりゃそうだよね。悪い未来が見えるって言ったらケイ君が気分を害しちゃう。そうしたらホントに別れちゃうよ。これまでで一番いい相手だったのに。


 そんなことはもう忘れて、ホテルに行った。もう帰ろうと思ったけど、電車が踏切事故で止まってた。両親もせっかくだから一緒に泊まればと言ってくれた。だから、私たちは特急電車でホテルへ向かった。小さいけど大きい小旅行だ。

「このホテルだな」

「うんっ」

気づけば、初めて身体の関係を考えるようになってきたの。ホテルのベッドの上で身体と身体を・・・・・キャッ!

「早くいくぞ」

「はいは~い!」

ドキドキを隠せずに、私は一気に階段を駆け上がった。で、こけた。


荷物を置いてからしばらく外を散歩することにした。嫌な予感などすっかり忘れて浮かれているめぐみ。

「なあ・・・・・君の後ろには影があるだろう」

「うん」

「僕には影なんてないんだ」

「どういうこと」

「それはもうじき分かるよ・・・・・」

そう言う彼はどこか怖かった。でも、どこか寂しそうで慰めてあげたかった。

「私、相談乗るよ。説明して」

「いい」

「大丈夫だから」

「いいってってんだろ!!」

ヒィッ!!ケイ君が初めて怒った!!

「ごめん・・・・・気分を害したみたいで」

「ああ・・・・・」

彼は笑ったが、やはり寂しさがベースに残っていた。


クルッ

さっきの言葉が気になって時々振り返る。でも、電灯がないところだったら、私も影が無い。それがずっと続いていた。

「なあ・・・・・さっきから言いたかったんだけど」

「何?何でも聞くよ」

優しく声をかけると、ケイ君は重苦しそうに口を開いた。

「わ・・・・・」

「わ?」

すごく言いづらそうだ。

「大丈夫?」

「わ・・・・・もう、これで・・・・・」

「何?」

「別れよう!!!!」

「?!」

何を言うかと思えば別れ話?!嫌だいやだ、そんなのやだ!!さっきまで身体の関係まで考えた彼なのに!!

「何で!!ずっと一緒っていったじゃん!!」

「あぁ・・・・・・・」

彼もつらそうだ。でも、私は言葉を止められなかった。

「意気地なし!!私が怖いの?!それとも何かがダメなの?!教えてよケイ君!!」

「うるさい!!!!」

ケイ君は道路に向かって走っていったんだ。


 ダッダッダッダッ

「ケイ君待って!!」

聞く耳持たず、ケイ君は走る。

ブーン

そして、ケイ君の目の前を車が通った!!

「え・・・・・」

目の前は自動車が出す閃光が散らばっている。その閃光に照らされた佐々木景祐は影をのば・・・・・してない!!本当にケイ君は影が無い!!

「あ」

めぐみは悟った。彼は生きている人間じゃないのかもしれない。都市伝説の怪人ってものだろうか。

「待って!!!!」

と、言った瞬間ケイ君は消えた。


数秒後に会ったケイ君は真っ赤っかだった。救急車がパトライトを回している。

「ケイ君!!!!大丈夫ケイ君!!!!行かないで!!私を残していかないで!!!!」

私は必死に叫ぶ。彼はもはや瀕死状態だ。

「彼は・・・・・彼はもうダメでしょう。というよりは・・・・・」

救急救命士が言葉を濁す。というよりはの先に言いたい言葉はもう知っている。

「ケイ君!!!!ケイ君!!!!」

私の魂の叫びに気づいたのか、ケイ君は目を開いた。

「めぐ・・・・・めぐみちゃ・・・・・ん」

「ケイ君!!!!」

「僕は・・・・・もうだめだ・・・・・めぐみちゃんは・・・・・他の・・・・・いい人を・・・・・みつ・・・・・見つけて・・・・・幸せに暮らして・・・・・僕のことは・・・・・もう忘れて・・・・・僕は人間じゃな・・・・・」

ウッとケイ君は苦々しい顔をする。それでも必死に言葉を続ける。

「キミと出会えて幸せだったよ・・・・・今までありがと・・・・・キミが巻き込まれず・・・・・よかった。お幸せに・・・・・」

次の瞬間、ケイ君は目を閉じた。逃げたのは私を巻き込まないためだったんだ・・・・・そう思うと涙が出る。ケイ君と過ごした短いけど長い時間。世話されっぱなしだったけどすごく楽しかった。そんな愛する人が怪人で・・・・・それでも私を守ってくれて・・・・・で・・・・・死んだ。

涙が止まらない。車がない、救急車のライトの世界で私は泣いた。いつまでもいつまでも泣いていた。涙が涸れるのはいつだろう。永遠に涸れることのない涙だった。

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