始まりもしないうちに終わってしまった恋

  • ★★★ Excellent!!!

答えがわかるということ。見えてしまうということ。

そんな便利な力があったら、ほしいなって思います、よね?

でも、そのとき見える答えが、自分にとって苦しく、つらいものであったら?

この作品は、どういうわけか持ち前の勘の良さで、一番知りたくない事実を真っ先に知ってしまう男性の物語です。

彼はある女性に一目惚れし、これ以上好きになる相手とは一生出会わないことをなぜか確信します。そして同時に、自分の恋が、始まりもしないうちに終わってしまったことを知るのです。

そんな彼の片想いの相手は、その秘めた恋心にちっとも気づかない。ちょっと鈍くて、でも、無防備で飾らないところが、どこか憎めない。もちろん、彼女の姿は、彼の視点というフィルターを通しているから、一層輝いて映るのでしょう。

「男の子にプレゼント貰うのなんて、初めて」

彼女の短いセリフに、彼はしばし沈黙してしまいます。言った当人でさえ気づいていない言外の意味を聞き取って。

自分の気持ちを伝えることは一生ないとわかっているからこそ、彼女との間に生まれた特別な関係。それは、いつも鋭すぎる勘に振り回されている彼が、なぜか先回りして気づくことのできなかった、ささやかな贈り物なのでした。

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