第六感騎士の英雄譚

白鷺雨月

第1話 第六感騎士の成り上がり英雄譚

 僕の名前はアレス。

 一応騎士の家系に生まれた。

 かなり貧乏だけどね。

 どれだけ貧乏かって明日のパンを買うお金もないぐらい。

 両親はすでになく、家族はほかにいない。いわゆる天涯孤独。

 そして戦地にかりだされ、僕は戦場の寒空の下にいた。

 僕の鎧の下には唯一の遺産である運命の女神像がいる。

 全財産とよばれるのはこれだけといえた。

 売ればいくばくかのお金になるとおもわれたが、不思議と愛着があり、どんなにお腹が空いていても売る気にはなれなかった。


 戦場で出撃ラッパが鳴り響き、僕は突撃の命令のもと、王国から貸し出された馬をはしらせた。


 すぐに目の前に敵が現れる。

 ばかでかい体躯の騎士だった。

 のっている馬も像なみのでかさだ。

 僕は勇気を降るしぼり、槍をつきたてるが、槍は敵の鎧にあたり、簡単に折れてしまった。敵は面倒そうにメイスをふりおろす。

 僕の兜に直撃し、僕は気絶した。

 ああ、このまま死ぬのかな。

 死ぬ前に腹いっぱい食べたかったな。



 目をさますと僕の目の前に白い服を着た、とてもきれいな女の人がいた。

 慈愛の瞳で僕を見ている。

 ああ、僕はこの人につれていかれて、天国にいくのかな。

「騎士アレスよ。私は運命の女神レイフィーナ。あなたの信心に対し、女神の加護をあたえます」

 そう言い、運命の女神レイフィーナは僕の額に手をあてる。

 僕の体は光につつまれた。



 また目さますとあのメイスが目の前にせまっていた。

 どうやら、殴り殺される瞬間の前にもどっているようだ。

 これが女神の加護なのか。

 下によけなさい。

 それは女神レイフィーナの声。

 僕はその声にしたがい、思いっきり背を下にまるめる。

 すると僕の頭の真上をメイスが通過していく。

 しかも敵の巨人騎士はその空振りした勢いで落馬してしまった。

 僕はその落馬した騎士の首めがけて槍をつきさす。

 槍は簡単に突き刺さり、巨人騎士は大量の血を噴水のように吹き上げ、絶命した。



 あの僕が倒した巨人騎士はかなり高名で高い地位あったらしく、帰還した僕は百士長に任命された。

 次の戦いで僕は部隊を指揮して進軍したが、急に馬が嫌がって進まなくなって夜営をすることにした。

 そうするとどうだろうか、急に天気が悪くなり、雨が降り、雷が鳴る。

 次の朝、攻撃目標の場所に行くと敵の部隊は雷の直撃を受け、全滅していた。

 僕はこの功績で千士長に出世した。


 それから幾つもの戦いに参加し、ほとんどを運だけで勝利した。

 霧の中、進軍すると敵の本営に偶然たどりつき、全滅させたり。

 城塞を攻略したときは閉め忘れられた城門をみつけ、少数の兵力で攻略することができた。

 そのいくつもの功績により、僕はついに王国に十二人しかいない万騎長に出世した。


 万騎長に出世した僕は長年の宿敵である王国の首都攻略を命令された。

「しかし、旦那も貧乏くじをひきましたな」

 そういうのはもと盗賊のジョシュであった。

「閣下なら、無事になしとげられますわ」

 馬首をならべ、そう言うのは女騎士はエミリアである。

 二人は百士長時代からの仲間で今は大事な幕僚でもある。

 彼らの意見では急に出世した僕をねたんだ他の貴族や万騎長たちがこの無謀な戦いを計画したのだという。

 しかし、成り上がりの僕は命令に従うしかなかった。

 それにあの腹を空かせていたあのころには戻りたくない。


 僕たちは国境の平原で敵軍と遭遇し、そのまま戦闘となった。

 敵は僕たちの十倍の兵力で包囲網を築き、殲滅しようとしてくる。

 密集隊型を維持しつつ、僕はある部隊をみつけ、攻撃を命令した。

 なぜ、そうしたかって。

 もう、それは勘とか第六感呼んでもいいものだ。

 それは運命の女神の導きといっていいだろう。

 その部隊の場所だけが光って見えたのだ。


 エミリアが少数の騎兵を率い、猛烈な突撃を繰り出す。

「かかれ!! かかれ!! かかれ!!」

 女騎士エミリアは叫ぶ。

 鎧を真っ赤な返り血で染めたエミリアはある豪華な鎧につつまれた騎士を捕虜として連れてきた。

 それは敵王国の王女アイリーンであった。




 王女アイリーンを捕虜にすることに成功した僕たちは敵王国と休戦条約を結ぶことに成功したのだ。

 かなり有利な条件で条約を結ぶことに成功したのだ。

 自信満々に帰国した僕を待っていたのはなんと追放令であった。

 どうやら勝手に条約を結んだ僕に反意があるということであった。


「旦那は成り上がりものですからな。他の血筋だけの貴族の反感をかっちまったのですよ」

 ジョシュが言う。

「閣下はなにがあっても私がお守りします」

 そうエミリアが言った。


 二人の協力もあり、僕たちは王都からの脱出に成功した。

 追放令をだしといて、殺しにくるとはあの貴族たちもひどいな。


 ジョシュの進めでアイリーンがいる王国に亡命した。

 アイリーンはあの戦いで僕たちを敵ながらあっぱれと気にいってくれたのだ。

 僕はアイリーン直属の元帥となり、故郷の国に攻めこんだ。

 この戦いは故郷の国に疫病が流行っていたためにほぼ戦わずに勝利した。

 僕はこの功績を認められ、アイリーンと結婚することになり国王となった。

 故郷の国を併合し、巨大な連合王国の初代国王となったのだ。

 貧乏騎士からのなり上がり見事なものだろう。

 僕は運と第六感だけをたよりに成り上がったのだ。


 エミリアを元帥に任命し、ジョシュを宰相に任命した。

 そして僕とアイリーンの間に産まれた娘にレイフィーナと名付けた。

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