悪い予感も使いよう

武海 進

悪い予感も使いよう

「チクショーーーーーーー!」


 叫びながら俺は、馬鹿な自分を呪っていた。


 俺の勘は当たり外れが激しい。


 正確に言えば良い予感は必ず外れ、悪い予感は必ず外れるのだ。


 昨日もカジノで外れると分かっていながらも勝てる予感がして、酒の勢いもあって有り金を全て賭けた大勝負をしてしまった。


 案の定負けた俺は無一文になってしまい、金を稼ぐ為に冒険者ギルドで仕事を受けて一稼ぎすることにした。


 だが、報酬だけでクエストを選んだのが不味かったらしい。


 森の奥深くにしか生えていない薬草の採取という殆どお使いのような仕事だと思って楽観視していたのだが、箱を開けてみれば薬草の群生地は獰猛な猛獣、普通の種類の2倍以上の巨体を誇る熊、カイザーベアのテリトリー内という超危険地帯だったのだ。


 それでも稼がないといけない俺はカイザーベアに気づかれぬように細心の注意を払って森を進み無事に群生地へとたどり着き薬草を採取した。


 そしてさて帰ろうか、そう思った瞬間嫌な予感が俺を襲い、ゆっくりと後ろを振り返ると、大口を開けて涎を垂らしたカイザーベアがいた。


 こうして俺は自分を乗りながら全力でカイザーベアから逃げる羽目になった。


「ハア、ハア、とっくにテリトリーは出たハズなのにまだ追ってきやがる!」


 余程腹が空いているのか、どれだけ逃げてもカイザーベアは俺を諦めてくれない。


 しかし俺も食べられる訳にはいかないので必死に走り続けていると、鬱蒼とした木々の間から光が見えた。


 やっと森から抜け出せるのかと思って全力で木々の間を縫って森から飛びだした瞬間、またまた嫌な予感がした俺は腰にぶら下げている鞭に手を伸ばしながら後ろを振り向く。


 何故そうしたかは分からないが、俺の100%当たる嫌な予感が生きたければそうしろと告げたのだ。


「地面が無い! クソ!」


 森から飛び出した先は崖だったのだ。


 咄嗟に俺は振るって木の幹に絡みつかせた鞭にしがみついた。


「グガアアアアアアア!」


 だが、俺を追いかけるのに夢中だったカイザーベアは崖下の川へと落ちていき、大きな水柱あげ、そのまま浮かび上がってくることは無かった。


 こうして命からがら依頼をこなした俺は無事に懐を温めた俺は思った。


 悪い予感が必ず当たるというのも、そういうものだと分かっているのならば逆に危険から身を守れるものだと。


 後、今日も少し嫌な予感がするがカジノへ行こうとも思った。


 人間、分かっちゃいるけど止められないものもあるのだ。

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悪い予感も使いよう 武海 進 @shin_takeumi

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