愛知編 第3話クーデター
「もう少ししたら県庁です」
「今更、県庁に俺が行っても意味ないぞ」
「そんなことはありません。これからも高杉知事にはこの愛知をまとめていく使命があるのです」
そんな心もない言葉をかける運転手兼SPに対してイラつき始めた頃街がいきなり騒がしくなって来ていることに気づいた。
逃げ出してる者もおり、何か異変が起きていることを察知して
「おい、車を止めろ」
と先程の感情も消え、冷静に運転手に伝えると
「何故ですか?またどこかに逃げるのですか」
と全く状況を理解していない反応を見せているのだ。
「いいから止まれ」
渋々とゆうことを聞いて車を止めたその時、
濃い霧で静かな道から爆音を鳴らしながら多くの鉄の塊どもがこちらに向かって来たのだ。
「な、なんですか。何故我が軍がこちらに向かって来ているのですか⁉︎。しかもあれは戦車や装甲車などの精鋭部隊!」
「これで終わりだな」
その鉄クズどもは私の車を囲むと、トヨタ製の戦車から煌びやかな勲章とエメラルドグリーンの軍服、つばのついた軍帽をして降りてきた。そして私の車のところに護衛をつけながら歩いて行くと
「貴様、どこの部隊だ!軍隊であろうと越権行為は許されないぞ」
とSPが車から降りて軍人の前に塞がった。
「私は早見中将、この愛知の国防上のトップで知事の側近である。そこを通せ」
SPがピストルを構えようとすると、護衛もアサルトライフルを車に向けてきて一触即発の状況の中
「よせ。その者を通せ」
「ですが、我らは貴方を護衛することが任務。こんな脅しに負けるような、、、」
「早く通せ。上の命令を聞け」
「知事。お迎えに上がりました。これからこの装甲車でお越しください。くれぐれも抵抗しないで下さいね」
「あぁ、分かったよ」
そのまま黒い車を後にして県庁にへと向かった。
愛知県庁
重苦しい執務室の中、一部の要人がその時を待っていた。
「高杉知事を連れて参りました」
「入れ」
そう市長が言うと不貞腐れた知事と感情のない中将が入ってきた。
すると下を向いていたおじいちゃん市長が一気に明るい顔になり
「知事、お待ちしておりました。どうぞ、こちらの席へ」
しかし、知事は
「回りくどいことはやめろ。悪い癖だぞ。大体の要件はわかる、早く伝えろ」
と足を立てながらイライラしていた。
「知事を辞任してください」
穏やかな声とは思えないほどの冷たく、残酷な一言をあっさりと言い放った。
「、、、、、、、、」
全く顔の色も変えずに市長を睨んでいる知事に焦ったのか
「この執務室の周りには事態の収集の為に多数の軍人が警護しています。ですのでここは穏便にお願いしますよ」
「少し感傷に浸っていただけだ。俺も元からこの職を続けようなんて、はなから思っていない。君の言う通り、辞任しよう」
重かった雰囲気も今ではなくなり、市長を含めた多くの人がホッとした。
「立派に退陣なさってもらい、ありがとうございます。後のことは全て我らに任せてください、元知事」
「あぁ、そうするよ」
その後、正式に辞表を提出してこの執務室から解放された。今、俺は早足で県庁から去り外の空気を吸っている。
「こんなに空気って美味しいんだな」
生まれてきてから味わったことが一つもない解放感に浸っていた。もう、命令や義務、職務に責任感。それらの重荷からようやく解放された。後はどこでなにをしようと自由、退職金も結構貰ったし、こんなうるさい都会からのんびり田舎でゆっくり余生を送ろう。そう思った矢先何者かに肩を捕まえられた。
「どうした、永田副知事、いや永田知事」
顔を真っ赤にしながらこちらを睨んでいる。何事かと思ったら小さな声で
「お前はこれでいいのかよ、、、」
第二次戦国時代 @jityan
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