もしも隣の部屋に住んでいる黒髪美人女子大学生がカレーのお裾分けをしてくれたなら、自分なら咽び泣きながらそれを食すであろう。
しかし、それは主人公を思索の迷路へと誘い込む罠だったのだ。
ほぼ全編にわたって漂うカレー臭に読者もカレー迷宮に迷い込み、ついつい近所のスーパーで食材やレトルトのカレーを買ってしまう飯テロの物語。
途中で、あれ? 恋愛小説に変わった? と読者を迷宮深くに誘うもやはり徹頭徹尾カレーを巡る心の旅である。
主人公にとって幸いだったのは的場という賢者がいたことか、或いはカレーを愛していたことか。