世界中から推される猫さまは、今日も忙しい。

ハティは今日も忙しい

　あなたは、猫のハティをご存じでしょうか。

　今、世界的人気を博しているこの愛らしい黒猫は、Ａ国の古いお城で暮らしています。

　このお城には今も、歴代の所有者である貴族の末裔の方が住んでいて、その方が自身のＳＮＳにハティを紹介するアカウントを作成したところ、そのきまぐれで可愛らしい姿が瞬く間に世界中の人々の心をつかみ、フォロワー数は先日、七百万人を越えました。

　日本でも「推し猫」として、世代を問わずブームを巻き起こしています。

　ハティは、お城に住んでいる貴族の家系に飼われている猫ですが、血統書付きというわけでも、コンクールで優勝した猫というわけでもなく、お城の敷地内に産み落とされ、野生動物に攻撃を受けて衰弱していたところを、先代のご当主が保護した、いわゆる雑種の保護猫なのです。

　その、心温まるエピソードが、人気の要因のひとつでもあります。

　日本でも私立のファンクラブが多数設立されるなどしており、世界中からキャットフードやおもちゃなどのプレゼントが、毎日のようにお城に届けられているそうです。

　一番送り届けられているプレゼントは、意外にもデイジーや薔薇などの花だということです。

　これは、お城の現当主が、ハティが届いた花をくわえている姿の写真をＳＮＳに投稿したこととがきっかけだったそうです。

　もちろん、海外や遠方からお花を届けるのは難しいことです。

　現在、Ａ国のハティのお城に近い地域の複数の花屋さんが「ハティにお花を届けるためのオンラインショップ」を開設しており、日本からも依頼することが可能となっているそうです。

　ハティに送りたい花を選び、クレジットカードでオンライン決済をすると、依頼者の名前とメッセージを現地語に翻訳した文章を添えて、お城まで配達してくれるというサービスです。

　このサービスを行っている花屋のホームページのリンクは以下に参照。

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　古い城の庭は、とてもクラシカルで荘厳だ。

　その中を、デイジーの花をくわえた黒猫が一匹。悠然と歩いている。

　今世界中から「推し猫」と呼ばれ、多くの人々に愛されているこの黒猫には、毎日の日課があった。

　黒猫が歩いて行く先にあるのは、敷地内にある墓だ。

　歴代の当主が眠る墓に着くと、黒猫はくわえていた花をそっと置く。

　毎日毎日、花を持ってきて、天気が良ければそのままそこで昼寝をする。

　それが彼女の日課だ。

　彼女がくわえて供えているデイジーと薔薇は、ここで眠る先代の当主が、好きな花だった。

　真っ白な髪で、しわしわの顔で笑う紳士は、彼女の永遠の「推し」だった。

　今日も、お城の庭の一角にある小さな墓地は、花で彩られている。